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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 身代わりの愛」 第一話

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皇位を弟の軽皇子に譲った皇極は、その後重祚(ちょうそ=同じ天皇が二度目の皇位に就くこと)して再度斉明天皇として即位する。中大兄皇子は鎌足との約束を守って自らの即位のタイミングを図っていた。

中大兄と母を同じくする妹がいた。間人皇女(はしひとのひめみこ)と呼ばれ、宮中でもその美しさは有名であった。
皇極天皇が弟の軽皇子に皇位を譲り、孝徳天皇となって、この間人との縁談話が持ち上がっていた。

兄を強く慕う間人はその日、宮中を訪れ寝所へ中大兄を訪ねていた。
周りの采女(うねめ=天皇の傍に仕える女子)たちが制止することを振り切って、強引に上がり込んだのだ。

「兄上さま、間人は悲しゅうございます。母上の仰せとはいえ、叔父様に嫁ぐなど心が張り裂けそうです」

「さもあろう。きっと母上は私のことを恨みに思って、そなたを嫁がせようと考えられたのだろう。天皇もお前なら文句が無いだろうからな。今しばらくは我慢なされよ。そちのことを一番慕っておるのはこのわたしだ。決して悲しませるようなことはしない」

「お兄さま・・・あの方に抱かれる前にわたくしを抱いてくださいませ」

この日の夜、間人は中大兄と一つになった。この時代父親の異なる兄妹は結婚したり、恋愛をしたりしていたが、同じ母を持つ兄妹はご法度になっていた。それでも、間人は兄を誰よりも男として感じていたし、中大兄も妹を誰よりも愛おしいと感じていた。

翌朝、宮中から去ってゆく間人の籠を見ながら、ひとりの采女がその後姿をずっと見つめていた。

「お可哀想な間人さま・・・」

采女は名前をほのかといい、間人と同じく中大兄を慕う女性であった。
身分の違いからライバルという意識ではなく、同じ恋をする女性として憐みを感じていた。

乙巳の変が終わって三か月ほど経った九月三日に中大兄は薬草狩りを行なうことにした。鎌足に後を任せて、従者数人だけを引き連れて出発した。女性皇族と世話をする采女たちもこれに従っていた。
鹿狩りを終えて、薬草摘みをしているひとりの采女に近づいた中大兄は、

「これ、間人。私だ」

と声を掛けた。

「皇子様、わたくしはほのかと申す采女でございます。お間違えなさらないようになさってください」

「なに?采女だと」

中大兄はこれほど間人にそっくりな女性をまさかという疑いの目で見つめていた。