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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅸ

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 同じ日の夜、美紗と日垣は、いつもの夜景が見える席に相対して座っていた。ほの暗い店の一番奥で、他の客の視線から逃れるかのようにひっそりと語り合う二つの人影を、テーブルの端に置かれたキャンドルの光が、ぼんやりと照らしていた。
「美紗」
 耳に心地よい低い声が、下の名前を呼んだ。
「今日は、誕生日だったね」
 日垣は、赤いリボンのかかった細長い銀色の箱を、マティーニのグラスの脇に置いた。
「どうして、ご存じなんですか?」
「情報収集は私の専門だよ。いや、この場合は越権行為と言うべきかな」
 日垣はすまし顔で答えた。人事課を管理下に置く統合情報局第1部長には、局内に勤務するすべての職員の個人情報に自由にアクセスする権限がある。そのことに思い至った美紗は、苦笑しながら箱を開けた。中には、控えめなデザインのネックレスが入っていた。プラチナの細いチェーンに、光の加減でピンク色にもオレンジ色にも見えるペンダントヘッドがついていた。
「こういうのは、正直言って、全然分からなくて」
 そう言って、日垣は目を伏せ、前髪をかき上げた。美紗は、息を飲んで箱の中を見つめた。人からアクセサリーをもらうのは、初めてだった。