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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「月ヶ瀬」 第五話

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頭を下げて車に乗り込んで駅から離れて行く和田の後ろ姿を会田はずっと見ていた。
「厄介なことになるかも知れない」
そう感じたことは間違いなかった。

名阪国道を利用して天理市を経て奈良市内に向かった和田は、先ほど話していた会田と言う男の素性を調べる必要があると感じていた。
最初に声をかけてきた時点で自分は危険人物と見られたのではないかと言う疑問からそう思うのだ。

このような古い習慣が根付く村では、よそ者に気軽に声をかけるなどと言うことは考えにくい。芸能人ならまだしも、黒っぽいスーツを着て、外車に乗っている男が用事もなく来るわけがないと会田の目には映ったのだろう。
完全に和田の車が見えなくなってすぐに、自転車で会田はある場所へ向かっていた。

奈良県警に和田がついたのは午後3時を少しだけ回っていた。
受付で氏名を言うと、奥から佐藤警部が顔を見せた。

「待ってたぞ、遅刻やな。久しぶりやないか和田」

「佐藤、いや警部、待たせてすまんな。府警以来だな」

「そうなるな。ここではなんやからおれの席に来いよ」

通されて、警部が座る椅子の前に和田は座らされた。

「早速やけど聞きたいことがあるんやろ?」

「そうやねん。ここに来る前に月ヶ瀬に寄って来てん。村の老人に話聞いたけど知らんって言いよるから、シラを切られたな。ところでその話を聞いた会田って言う男どんな人物か調べられるか?」

「会田か・・・調べさせるわ」

県警の捜査員が調べたところでは、役場勤務をしていたが、自主退職して町の清掃とか、駅の清掃とかを行なっている評判は悪くない人物だということだった。

「なあ、佐藤。半年前にな義理の弟が月ヶ瀬を調べている最中に軽トラックに撥ねられて、下半身不随になってしもうてん。調べてもひき逃げしたのは何処の誰だか不明のまま、捜査打ち切りになった案件があるねん。まず今回はそこから調べたいねん。駐在の巡査に全面協力するように圧力掛けてくれへんか?」

和田は佐藤なら駐在の巡査に強くものが言えると考えた。
作品名:「月ヶ瀬」 第五話 作家名:てっしゅう