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遅くない、スタートライン 第5部 第2話

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(1)

俺は朝からため息をついてた。ため息の原因とは…

「だから!今日は間違ったから、このカップで飲んでよ!あきと」
あきとは何が気にいらないのか、口を尖らしていた。俺が悪いんだけど、ちょっと間違えただけじゃないか!幼稚舎に持っていくコップと朝ごはんで使うコップを間違ってしまった。

千尋さんが様子を見に来た。
「あきとぉ…今日はこれで飲みなさい。パパもワザと間違ったんじゃないのよ」
千尋さんに言われて、あきとはミルクの入ったコップを持って飲み始めた。

美裕が入院してからこんな事が始まった。萌美(めぐみ)が産まれた日は幼稚舎は土曜日で休みだった。土曜日の夕方にあきとは千尋さん達に連れられて、萌美を見に来た。そりゃ喜んで、消毒した手で萌美の小さい手を触って喜んだよ。また…あきとが喜んだのは美裕に逢えたからだ。金曜日に幼稚舎から帰ってきたら美裕はいない。その日は大人しく千尋さん達と一緒に寝たそうだ。寂しかったんだな!と俺と美裕は思った。

「あっくん…お兄ちゃんになったね。あっくんから卒業しますか?」
美裕の言うことがわからなかったのか、俺の顔を見た。いや…モアちゃんが産まれたらあっくんの呼び名を変えようと美裕と話してたんだ。あっくんもいいが (#^.^#)

「あきとぉ!って呼んでいい?モアちゃんにはあきとにいちゃんって呼ばせようと思ってるんだけど」
「うん。モアちゃんもめぐみちゃんって名前に決まったんだ。だからモアちゃんは、めぐたんだ」
あっくんことあきとは、嬉しそうにうんうんうなづいた。

めぐたんとのご対面が終わった、あきとは美裕の顔を見てちょっとテレくさそうにした。あら…どうやらお約束らしいな。美裕と何を約束したんだか…

「いいよぉ、どうぞ!靴脱いでね」美裕が笑顔で言った。
千尋さん達はわかってるみたいで、口に手を当てて笑っていた。俺も察しがついた!コイツぅ!!

おなかが引っ込んだ美裕だ!禁止事項が解禁されたからなぁ。あきとは美裕のベッドに入って、美裕の胸に顔をうずめた。そしてあの小さな手で美裕の背中をギュッと抱いた。俺は息子に先を越された!!!俺だってしたかったのに!まだしてなかったのに!!右のこぶしがワナった俺だ。

見かねた雄介義兄さんが俺の手を自分の手で軽く叩いた。ガマンしろぉ?

「はいはい!お約束だもんね。これからは1日1回ダッコギューしようね。あきと」
「うん。ママぁ!」また…あきとも笑ってまた美裕の胸に顔を埋めやがった。

土曜日はご機嫌で、日曜日も昼過ぎから面会に来て夕方まで美裕の部屋にいたあきとだ。俺もいたけど!産後の美裕も眠らなきゃいけないのに。また…このあきとは図々しくも( 一一) 美裕のベッドに入って美裕と一緒に寝たんだ。俺は自分の息子とはいえ…すっごいジェラシーを覚えた。診察に来た真理子第2副院長先生にネタをやったようなもんだ。またカラかわれるわ ( ;´Д`)

有ちゃんが病院に迎えに来た。俺はこのまま、高茂久院長先生との【お勉強会】だからな。有ちゃんが大学のサークル活動の後にあきとを迎えに来たんだ。俺は今から2時間ほどかかるし、美裕もめぐたんの世話もあるからさ。あきとは渋々…有ちゃんと一緒にバスに乗って家に帰った。

真理子第2副院長先生から聞いてるのか、高茂久院長先生は俺の顔を見るなり笑った。
「なぁに…息子にジェラシーしてんの?今からそんなことじゃ…家帰ったらもっとツライぞ」
「わ、わかってますよぉ」俺はちょっと顔が赤くなった。
「はいはい!この勉強会が終わって病室に帰ったら、魔法使いの美裕ちゃんが魔法かけてくれるよ。パパにさ」
笑いながら言わないでくれますか?高茂久院長先生!

勉強会から病室に帰った俺は、そっとドアを開けた。美裕が寝てると思ったから!でも…奥からめぐたんの泣き声が聞こえた。

「パパぁ?いいタイミングに帰ってきたね。今…めぐたん来たところよ」美裕の声が聞こえた。

俺は美裕に教えてもらいながら、背中をさすってゲップを出させた。またオムツも替えて、スッキリしたのか俺の腕の中で眠りかけていた…めぐたんだ。

「そんなに私に似てる?」
「うん。そっくり!ハンコ母子」俺はめぐたんの手を軽く握った。
「はいはい。それと…パパぁ!あきとはあきと!パパはパパだからね」
ん?俺はちょっと考えた。視線を美裕に戻すと…美裕の手が【おいでおいで】と動いていた。

家に帰るまで、車の中でニタついた俺だ。もうおわかりだろう?ホント、うちの奥さんは【魔法使いの美裕ちゃん】だよ。めぐたんをキャスターのついたベビーベッドに戻すように美裕に言われ、戻したところで俺の手を握って、美裕はベッドから出てきた。土曜日の昼過ぎには看護師さん達の介添えで、自分の足で立ちトイレまで行った美裕だ。元々、足は強い美裕だからさ。1回の介添えで次からは自分でトイレに行き、俺が帰る頃には廊下まで出てきて、【バイバイ】してくれたもん。

俺の手を握った美裕は…
「はい!どうぞ…」と俺に笑った。俺はビックリした(#^.^#)
「い、いいの?」
「うん。昨日は千尋さん達いたし、今日はあきとがいたからね」
「うん。じゃ…」俺はゆっくり手を伸ばした。

妊娠中期からおなかが出てきた美裕…おなかを圧迫してはいけないから、その時期から後ろからそっと抱きしめていた俺だ。前からなんて…半年以上してなかたっな。俺は美裕の背中に手を回した。

「あぁ…この感触ぅ!」
俺が背が高いから、背の低い美裕は俺の肩までなく…いつも俺の胸に美裕の顔が触れた。美裕も俺の背中に手を回した。
「うん…この感触ぅ」同じ言葉を言った美裕だ。俺達は唇を合わせた…出産後も人の出入りがあったため、まだキスもしていなかった。唇を離しても…また唇を合わせた俺達だ。

「ね…これであきとにジェラシーしないのよ。めぐたんにも」
「うん。でも…コブ寝静まったら、あきととの約束みたいにしてくれる?」
「はいはい。スキンシップね!パパ」美裕はお約束してくれた。

俺も美裕に魔法をかけられ、次の日から美裕が退院するまで頑張ろうと思ったけど!月曜日からあきとのご機嫌が悪くなった。千尋さん達は【寂しいから】と言われた。産休に入っても、美裕はあきとのお弁当作りはしていた。キャラ弁だし、キャラ弁の中につくプチスィーツまであるからさ。俺も弁当作れるけど、美裕のようにはいかない。それも原因のひとつだと思う。月曜日はコップ!火曜日はお弁当!木曜日はお気に入りのキャラクターのタオルを洗濯してしまって、スイミングに持っていけなかったこと!だと思う。

美裕には言わせれば…
「パパはワタシじゃないもん。あぁ…こんなのどう?」美裕は俺に画用紙を見せた。
俺は画用紙を見ながら、家に帰ってから今度は間違えないように、コップやタオルをセッティングした。あきとは今日は何も言わずに、【いただきます】と言ってスープ飲んだし。タオルも自分でかばんの中に入れた。

【合格ですか?】俺はちょっとホッとした。