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過ぎゆく日々

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おとな


 子どもだから、と言われて、多くの制限が課されていた頃、大人はいいなあ、と思ったものだ。夜は好きなだけ起きていられるし、欲しいものも買うことができる。何より、怒られるということがない。
 
 そして、そんな自分も大人になった。たしかに夜更かしもできるし、大人買いだってできる。でも、そんな自由と引き替えに、自立や責任という厳しい現実と向き合うことになった。
 親という監視役がなくなり、自分で自分を管理しなければならない。自分を甘やかさないということはとても難しい。油断をすると、すぐに生活が乱れてしまう。
 そして、働かなければ好きなものを買うことはできない。いや、食べていくことさえままならなくなる。大人というものも決して楽ではないのだと気づかされることになる。 
 そうして、子どもの頃はよかったなあ、なんて勝手なことを思う。今にしても思えば、子どもだから、と許されることがたくさんあった。大抵のことは、怒られ叱られ謝れば、それで終わった。
 
 だが、大人はそうはいかない。怒られないから過ちに気づかないし、謝ることに慣れていない。そして、やがては他人とのトラブルになったりする。それがさらに発展して、警察沙汰にということも。最後は法の裁きを受ける羽目に、なんてことにもなりかねない。
 誰にも叱られことのない大人ほど、厄介な存在はないのではないだろうか。歳を重ねるだけで、誰もが立派な大人になるわけではない。時に立ち止まり、自分が間違っていないか、あるいは悪い部分はないか、振り返るべきだろう。
 そう思うのは、最近テレビを通して、いい大人が他人に迷惑をかけても、己の非を認めようとしなかったり、首をかしげたくなる言動を目にすることが多いからかもしれない。
 
 実るほど頭を垂れる稲穂かな
 
 ふと、そんな言葉が心に浮かんだ。



作品名:過ぎゆく日々 作家名:鏡湖