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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第二十九話

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恵美子とひとしきり話をした後で、ショッピングモールで買い物をしようとぶらついた。
気分転換がしたかったので買い物は丁度良いと感じていた。これからは好きなものが買えなくなる。気に入った洋服があれば買おうと探していた。

「佳恵さんじゃないですか?」

そう声を掛けられた。
振り返ると見知った顔だった。

「まあ、斎藤さん、こんなところで珍しいですわね、お会いするだなんて」

「私はこちらの中にあるショップへ納品に来た帰りなんですよ。お会いできてうれしいです。スタバに行きましょう。お茶でもいかがですか?」

「へえ~そうだったのですね。少しなら構いません」

席に着いてカフェラテを飲みならが、私は斎藤の顔をちょっと見つめてしまった。
改めて素敵な男性だと意識してしまう。

「洋子さんからお聞きしましたよ。お仕事を探されているんですって?」

「ええ、暇をしていても仕方ないので働こうかと考えましたの」

「それはいいことです。お電話差し上げようかと思っていたところだったので、ちょうど良かったです。私のところは輸入雑貨を扱っている小さな商社です。専門的な仕事なので英語が出来ないと手伝って戴くことが出来ないのですが、失礼ですが喋れますか?」

「いいえ、全くダメです」

「そうでしたか。では、取引先でパートさんを募集しているショップがあるのですが、そちらで勤務して戴くことは可能ですか?」

「ショップですか?こんなおばさんでもいいのでしょうか?」

「おばさんじゃないですよ、佳恵さん。若い人向けの洋服じゃありませんので、最初は商品を覚えて戴くことから始められれば大丈夫だと思います」

「そうですか。どちらのお店なんでしょう?」

「星ヶ丘です」

星ヶ丘、それは名古屋市の東に位置する繁華街だった。
佳恵はその近くにある大学を卒業していた。

「いいところですね。私、椙山女学園(すぎやま)の出身なんです」

「そうだったのですか?それなら地理が解るので安心です。テラス内にあるお店です」

「わかります。よく学校帰りに立ち寄りましたから。まだあるのですね?」

「ありますよ。へえ~佳恵さんってお嬢さんなんだ」