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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第二十八話

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夫からの離婚届に署名捺印して、後は約束通りの証文にサインをすれば、すべてが終わる。結婚の時も簡単に承諾したけど、離婚も簡単にすることが不思議に思えた。
結局私たち夫婦は心からの愛情が無く一緒になったからこの結果を招いたのだと感じた。

よく離婚は相当揉めると聞く。そこには情に絡む未練とか、子供の親権とか、もちろん慰謝料などの金銭面を含めて、夫婦間で納得が行く話にならないからだ。
信じられないほど悲しくもなく、不安もなくここにいる自分が本当の佳恵なのだろうか。
それとも、目を覚ましたもう一人の佳恵なのだろうか。

一週間ほどして夫は書類をもって自宅へやって来た。
洋子と二言三言話して、役所に行くと言って出て行き、その足で東京へ帰っていった。
私たちは正式に離婚した。
半年間の束縛はあるが、再婚も出来る。
次の正月を新しい家族で過ごすことも叶う。

パラパラといろんなことが頭の中をよぎる。
恵美子にラインを送った。離婚したと・・・

直ぐに会いたいと言ってきた。
洋子と家に居るのが気まずく感じていたので、外に出たいと思った。

「洋子、ちょっと出かけて来るね。晩ごはんは自分で食べて頂戴」

「ええ?もう和仁さんと会いに行くの?」

「違うわよ。恵美子さんと会ってくるの」

「ねえ、ママ。斎藤さんとのこと考えてよ」

「考えてって、仕事の事?」

「それもだけど、優華ちゃんから返事が来て、一緒に会いたいって聞かれているの。どう返事したらいい?」

「帰ってから考えるわ。今のところ何も予定は無いから、あなたが決めてくれればいいよ」

「じゃあ、連絡しておくね。ママ、不用意なことはしないでね」

娘は私が淋しさから和仁と会って変なことをするとでも考えているのだろう。
今はそんな気にはなれない。男の人と何かしたいとも思わないし、正直寂しいとは感じていない。
自分のこれからを考えると、まずは仕事を探すことが最優先だし、恵美子との絆も大切にしなければならない。たった一人の理解者だからだ。

待ち合わせ場所に着いた私は、恵美子に抱き着いた。
驚いたように私の肩に手をやって少し引き離して顔をじっと見られた。