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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「空蝉の恋」 第二十一話

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この状況に救いの女神が現れた。
宿伯客の男女が二組入って来たのだ。

「おはようございます~」

とっさに私は声を出した。

「おはようございます」

和仁は少し体を離した。私はホッとした。

「どちらから来られたのですか?」

そう聞いてきたのは若いカップルの男性の方だった。

「はい、名古屋です」

「そうですか。ボクは東京です。ここは初めてなのですが、景色もいいし、お湯もいいし、それに混浴なので最高ですね」

「お若いですよね?ご夫婦ですか?」

「いえ、違います。お母さんたちはご夫婦でしょう?」

お母さんと言われてしまった。それは二十歳代の人から見ればそうなのかも知れない。

「私たちも夫婦じゃないの」

「ええ?いま流行りの不倫ですか?」

隣りの女性がその言葉を制するように、

「何を聞いているの!失礼でしょ」

和仁がそれに答えて、

「気にしないでください。我々ぐらいの年齢になると友達でもこうして男女で旅行するんですよ」

「そうなんですか。ボクたちは友達以上なんです。なので同じかと思って聞いてみたんです」

「ええ?あなたたちが?若いのに」

「彼女は歳上で今年30です。別居中ですが正式には離婚していません。ボクは独身で26歳です」

意外なことがあるものだ。人は見かけによらないというが、彼女はどう見ても純情でそんなことをするような顔には見えなかった。
イチャついていた恵美子たちもこの話を聞いて関心を示した。

「へえ~意外だね。ボクたちも人には言えない関係だけど、どうしてそうなっちゃったの?」

康生の問いかけに、二人は顔を見合わせて、やがて女性の方が口を開いた。

「彼とはSNSで知り合いました。私の相談に乗ってくれていて仲良くなったんです。いけないとは思いましたが、会いたくなって今日ここへ一泊で来ました」

「いきなりお泊りだったの?」

「お互いに遠距離なので、日帰りで会うということが難しかったんです」

「じゃあ彼は東京で、あなたはどちらですか?」

「私は福岡です」

「それは遠いね~へえ~すごいね。若いってそう言う情熱があるから羨ましいよ」

私はこの二人の話を聞いて女の切ない思いを強く感じられた。それは自分の思いでもあるように思えてきた。