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ワタシタチ。2

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三年












「料理するんだね。」










料理好きな元カレが揃えていった調味料たちが

静かにキッチンで並べられている







「まあ、それなりに。」







そう答えた










終電を逃して帰れないと言うから

仕方なく私の家に泊まらせる同僚の細川(24)は

彼女いない歴3年で血液型はA型







さっきまで一緒に呑んでいて

その時に一方的に伝えられた










「彼氏は?」










「いるけど。」










窓を全開にして

私は煙草に火をつけた




部屋の暑苦しい空気が一気に夜風に溶け込んで

今までここに居たくせに、と少し胸が騒ついた







「一緒に住んでるんじゃないの?」







「住んでないよ。」










どーでもいいことを当たり前のように聞かないで欲しいと思った






















「実は前から気になってたんだよね、矢野さんのこと。」










「うそ。」










「俺のこと、どう思ってる?」







ただの同僚、と言いかけて私はやめた




この住み慣れた部屋で

自分のことを好きだと言ってくれた人のことを

今から振るのか










この人と付き合ったらどんな感じなんだろう










純粋に考えてみた







笑っちゃうくらい今の彼とはうまくいってなくて

休みも合わなければ話も合わなくて

それでもなんとなく一緒に居て

気付けばもう三年で













「三年。」







「三年?」







「三年前、何してた?」










「大学入ってから付き合った彼女と

別れたことしか印象にない。(笑)」










「わたしはその頃に今の彼と付き合い始めたよ。」







言ってから後悔した




遠回しに傷付ける言い方をしてしまった













「じゃあ、三年目になるんだ。」







「...うん。」










そっか




彼にとっては

どーでもいいことではないのか













「別れるつもりもない?」










なんてことを聞くんだろうと思ったけれど







「別れようと思ってる。」







小さく本音が溢れた










「うまくいってないの?」







まあね~と煙草を灰皿に押し付け

ゆっくりと窓を閉めた













「俺が彼氏になることは無理、かな?なんて。」













「愛とか恋とかよく分かんないんだよね。

それなりに恋愛はしてきたつもりだったんだけど。もう24なのにね。」










それはみんな同じだよ、と悲しそうな表情で私に告げた

























私達はいつだって正解を探しているんでしょう




名前の付いていない感情は確かにあって

だけどそれは誰しも平等に感じることはできないって
















「ごめんね。」










残酷だよなぁと

大人って何だろうなぁと

哀しくてたまらなかったんだよ










目が覚めたらメールをしようと思った










『今までありがとう。』







きっと彼はすんなり受け入れてくれる

薄々気付いていただろうし










あなたのため?




ううん、違う

全て自分のためだった













「寝よっか。」







「一緒に?」







「ばーか。ソファで寝て。」







「ほーい。」













三年ってどうなの

短いの?長いの?
















「ねえ。」





「ん?」







「やっぱり一緒に寝てみる?」
















そして出会った三年前

二人はまだお互いのことを知らない










彼もきっとこう言うよ










『僕もずっと正解を探していたんだ。』












ばかみたい











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『三年』/ meluco.









作品名:ワタシタチ。2 作家名:melco.