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てっしゅう
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「空蝉の恋」 第五話

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片桐恵美子とは何度か食事をするようになっていた。
彼女はエアロビダンスのほかに熱中している趣味があった。それはテニスだ。
何度か誘われているけどスポーツ音痴の私には、あのラケットを握って炎天下で運動するなどということは無理だと感じていた。

今日もランチの時にまた誘われた。

「ねえ、佳恵さん、何度もしつこいけど一緒にテニスやりましょうよ。スポーツ音痴とか言われるけど、エアロビではなかなかのセンスだと思っているから絶対に大丈夫よ」

「誘ってくれるのは嬉しいけど、外でやるスポーツは苦手なの」

「じゃあ、室内だったらやれる?」

「テニスでしょ?」

「もちろんよ。インドアテニスも可能な施設を見つけたから、そこなら大丈夫よ。一緒にこれから見学に行かない?」

「室内でやるということは、体育館とかなの?」

「ううん、一般の施設よ」

「そうなの、あまり乗る気がしないけどそれほどまでに言われるなら、いいわよ」

子供のころから運動は苦手な方だったので、大人になってもスキーとかスケートとか誘われても断ってきた。エアロビは体力維持とダイエットを兼ねてだったので踏み込めたけど、テニスを含めて球技なんかボーリングでもガーター連発していたぐらいダメだと自分は感じている。

恵美子に連れられて、訪ねた場所は大きな倉庫を利用したインドアテニススクールだった。
受付で説明を聞いて、コートを見せてもらうと、そこではポーンというラケットに当たる時の音が屋内にこだましていた。
コーチらしき男性がボール籠を脇に置いて、レッスン生に向けて緩いボールを打っていた。

傍まで行くと、私たちに気付いたのか、打つのを止めて声をかけてくれた。

「見学ですか?よかったら体験入学されてはいかがですか?」

恵美子はじっとコーチの方を見つめていた。

「ねえ、佳恵さん、体験してみましょうよ」

「あなたは上手でしょうけど、私は全くの初心者よ。一緒になんて無理」

「そんなことを言わずに、ね?」

この後受付に空いている時間を調べてもらって、来週のエアロビのあとの時間で予約を受け付けてもらった。
何だか気乗りがしない気分で自宅へ帰った私に娘が駆け寄ってきて、

「ねえ?ママ、パパと旅行に行く約束していたの?」

「してないよ。なんでそんなこと聞くの?」

「さっきね、旅行代理店から電話があって、確認したいことがあるからとパパに代わって欲しいと言われたんだけど、東京に居ますと返事したら、じゃあ奥様がお帰りになったらご連絡くださいと言われたから、聞いたの」

「私とじゃなくてどなたかお友達か会社の人と行くんじゃないの?」

「そう、ならママに電話が欲しいなんて言わないと思うけどなあ~」

「そうね、今時プライバシーは保護ってうるさいものね。とりあえず電話してみるわ」