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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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へた・マーク

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「コウちゃん、ドライブに行こう」
 いとこのおねえさんがさそいにきた。免許を取ったら、ぼくをまっ先にのせてくれると言ったおねえさんは、いつも宿題を見てくれたり、遊んでくれるんだ。
 免許を取りにいく前、おじいちゃんやおばあちゃんやお母さん、それにお父さんまでもが、『あいつは、運動神経がにぶい上にあきっぽいから、絶対途中で投げ出す』って、へんな太鼓判を押すもんだから、安心して適当に約束しただけだったのに。
 ところがおねえさんは、かなりの時間と費用をかけて、みごとに免許を取っちゃった。
 どうしよう。たちまちぼくの心臓はどきどきだ。
「さあ、乗って乗って」
 おねえさんはじょうきげんで、ぼくに助手席をすすめた。小ぶりの黄色い車はぴかぴかで、フロントガラスのはしっこには、若葉マークがはってある。
「わたしなんか、これ、フロントガラスにいっぱいはらなきゃねえ」
 おねえさんは、はしゃいでいる。
「でも、そしたら前が見えないよ」
 ぼくが、さめた風にぼそっといったら、
「あ、そうだよねえ。きゃはは」
と、いっそうハイテンションになった。
 さあ、出発だ。どうか死んでも命がありますように。
 ギュイーン! キキキッ。うわあっ! いきなり急発進。横から出てきた車とぶつかりそうになった。この先、いったいどんな目にあうことやら。くわばらくわばら。

 キキキキキキッ! キキー!

 案の上、急ブレーキと急発進のくり返し。そのたびぼくは冷や冷やだ。もう、手のひらはぐっしょり汗でぬれている。きっと、どんなサスペンス映画だって、このはらはらどきどきにはかなわない。
 あ、ガードレールにこすりそう。ああ、センターラインを越えた。うわあ、対向車が!
 叫び声をあげないよう、必死でがまんしていたら、そのたびに「ひ」とか、「わ」とか、ちょっと声が漏れた。そしたらおねえさんは、ぼくの具合が悪くなったと思ったらしい。
「だいじょうぶ? 顔色わるいけど」
 やれやれいったい、だれのせいだ? 

 そんなこんなでやっと、岬の公園に着いた。
「わあ、いい景色。海がきれいよ」
 おねえさんは満足そうだ。ぼくも車から出られてひと安心。
 帰りもぼくのはらはらどきどきは続いた。おねえさんは少しも動じないけど、まわりの車は、おねえさんの車をよけるのに大変だ。
「ばかやろー」
「へたくそ!」
 なんて、ば声を浴びせられた。
 やっと家に帰ってきたときは、ぼくはぐったり。ぼくの奇跡の生還を祝って、お母さんがお赤飯を炊いてくれたほどだ。

「このままじゃいけないよ。おねえさん、事故にあっちゃう」
 ぼくはおねえさんのために、なにかいい方法はないかと考えた。
 空を見て、海を見て、山や畑を見渡して、ついにいい方法を思いついた。
「それはいい考えだわ」
と、お母さんが手伝ってくれた。
「なあに。コウちゃん。わたしにプレゼントって」
 おねえさんがやってきた。
「これだよ」
 ぼくは、おねえさんの車のボンネットに一枚、後ろにも一枚、自分で作った大きなステッカーを貼り付けた。
 うん。ムラサキのラメ入りのステッカーは黄色い車によく映える。
「なに、これ。おまじない?」
「うん。まあね」
 さっそくおねえさんは車を走らせた。ぼくもいっしょに乗って。
 新しいステッカーを見て、まわりの車はすんなりよけてくれる。思った通りだ。運転してる人は、くすくす笑ってたけどね。
 気持ちよく運転していたおねえさんだけど、さすがに不思議に思ったみたい。
「ねえ、コウちゃん。これって何をデザインしたの? なんだか、なすの……」
と、聞いたところで、ぼくは自信たっぷりに答えたんだ。
「うん。『へた・マーク』だよ」
「なるほど! うまい」
 おねえさんはぽんと手を打った。
 おっと、だめだよ。手を離しちゃ。
 これからは運転の腕を上げて、早くこのマークがとれるといいね。おねえさん。
作品名:へた・マーク 作家名:せき あゆみ