「空蝉の恋」 第二話
「どういう意味って、二人だけになったら、お互いに自分のことは自分でしましょうと言ってみるということよ」
「ならいいわ。ママがパパと離婚するのかと思ったから聞いてみたの」
「離婚？・・・」
「だって、その時は解らないって言ったじゃない」
「気を回し過ぎよ。離婚なんてしても困るのは私よ」
「好きな人が出来てもそう思う？」
「何を言ってるの、もう。好きな人なんて出来るわけがないじゃない。こんな歳で」
「ママは綺麗だよ。ジムにも通うんでしょう？きっと声掛けられたりするわよ。パパが傍に居ないからちょっとは気が弛むでしょう？」
「あなた怖いことを言うのね～信じられない。もうこの話はよしましょう。ということで、週末の土日は東京に行くから、洋子も時間があるなら一緒してくれる？パパ喜ぶわよ」
「いいえ、パパとママの邪魔はしないから大丈夫」
「なんの邪魔なの？手伝うのが嫌なんでしょう？」
「ママは鈍いね・・・まあそれがいいところだけど」
「あなたは行きたくないということね？」
「うん、ディズニーに行くなら話は別だけど」
「ええ？ママはそんなところには行きたくないから、一緒に行って、あなただけ行ってらっしゃいよ」
「そんなのつまらないから嫌よ」
「じゃあ、友達と一緒とか彼と待ち合わせれば？」
「彼がいるなら、ここから一緒に行くよ。別々になんか泊まれないじゃない」
「そうね、分かったわ。じゃあ、週末は家の戸締りとか、掃除洗濯とかは自分でしてね」
「うん、大丈夫」
やはり娘は行かないと言った。それはそうであろう。
それにしても、娘は私と夫の仲があまりよくないということを察しているのだろうか。
いつまでも子供ではないということだ。
10年近くも無かった夜のことが、東京に通うことで復活した。
やはり離れていることの寂しさが、そういう恋心みたいなものを誘うのだろうか。
それとも単にストレスの発散かも知れない。
理由は・・・自分だけ済ませるからだ。
それは結婚した時から変わっていないことだったけど、間が空いていたことでなお一層夫の自分に対する気持ちと言うものが分かりかけてきた。
作品名：「空蝉の恋」 第二話 作家名：てっしゅう