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満たされぬ心

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目の前の私に見つめられて‥私は言葉が発せなくなってしまった。
また目の前の私が口を開いた。そして聞こえた言葉は‥‥
「もう自分でもわかってるんじゃない。俊樹の心はもう私にはないのよ。諦めなさい」

私の目からはまた‥涙が伝い落ちた。
「泣いてもどうにもならない事ってあるの。泣けば泣くほど傷ついちゃうの‥もうそれ以上傷つくのはよしなさい。所詮‥そういう運命だったのよ。俊樹とは」

私は手の甲で涙を拭いながら‥
「‥諦めなきゃいけないわよね。もう心は残ってないのよね‥俊樹には」
「うん。前を向かなきゃ‥」
そして私の姿が消えた。その姿が消えたと同時に‥またあの老人が私の前に現れた。

老人はステッキの柄を私の手に軽くつけて言った。
「諦めも‥人生の一つの選択じゃよ。その諦めがまた未来を繋ぐものかもしれない‥貴女にはまた違う人生が待っている。その男には貴女の心を満たすことができなかった。ただそれだけの事じゃ。また‥貴女の未来に幸せが訪れるように‥」
ステッキは私の手の甲を軽く叩いた。ステッキからまばゆい光が辺り一面に広がった。

作品名:満たされぬ心 作家名:楓 美風