小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

化粧して!

INDEX|4ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

例えば?



「そう言えば、見せて貰ってないよね」

 壁に貼られたポスターの前で、行信君が立ち止まります。

 ポスターには、リップブラシで口紅塗る女性が描かれていました。

 行信君は、隣で同じポスターを眺めている美姫さんの横顔を見ます。

「化粧した、美姫さん。」

「…」

「見たい!」

「─ そう言う機会が、あったらね。」

 固まった様に、ポスターから目を晒さない美姫さん。

 その不自然さに抗議する様に、行信君が、顔を近づけます。

「例えば?」

「特別なイベントが有る時とか…」

「それなら!」

 声に反応して、漸く自分の方を見た美姫さんに、行信君はニヤリとしました。

「近日中にあるでしょ?」

「?」

 行信君の人差し指が、自分の鼻に向けられます。

「た・ん・じょう・び」

「…そうだけど?」

「イベント…だよね?」

「─」

 目を逸らした美姫さんに行信君が迫ります

「姫様?」

 美姫が嫌がる顔を見たくて、行信君が勝手にしている<姫>呼ばわり。

 しかし世間は、そうは思ってくれない。

 だから美姫さんの口調は、反射的にきつくなります。

「人目がある所で、そう言う呼び方しないで。」

「姫!」

「声が大きい!」

 身を屈めて、伏せた美姫さんの顔を覗き込む行信君。

 視線から逃れようと、美姫さんは目を閉じます。

 沈黙の攻防。

 観念した美姫さんは顔を上げました。

 期待の視線を送る行信君に、唇を尖らせて 精一杯の不本意さを示します。

「…解ったから。次のデートの時に…して来てあげる。。。」

作品名:化粧して! 作家名:紀之介