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「誰かに愛されたい」 いつもそう思ってた
「してほしいことがあるなら同じことをしてあげればいいんだよ」と
誰かが言っていたから僕は恋をしてみた
「愛と恋は違う」ってそんな歌を聴いたことはあったけど
愛し方が分からない僕は恋をしてみた

「誰でもいい」なんて思っていたわけじぁないし
その人のためにできることなんだってしてあげたいと思った
春の雨の日には君と一緒に入る傘を
夏の暑い日には君が大好きなチョコミントアイスを
秋の寂しい日には君と一緒に撮った湖に映る夕日の写真を
冬の寒い日には君のためにあったかいココアを
その人のためにできることなんでも…なんでも…してみたのだけれど
あれは本当に…本当に「恋」だったのだけれど
「愛と恋は違う」という歌の意味がはじめて分かった気がした

どんなに必要なものでも
どんなに大好きなものでも
どんなに綺麗なものでも
どんなにあったかいものでも
見返りを求めてあげたものは全部
どこか冷たくて少し重たくてザラザラとしていて
「誰かに愛されたい」 僕はただそれだけを投げつけていた
「失恋」とはよく言ったもので僕は君を失ったのではなく恋を失った
もう恋なんてしない 僕は「誰かに愛されたい」だけなのだから

あれから探し続けてる 心の居場所を
今までよりももっとまじめに働いてみたり
今までよりももっと誰かと話してみたり
今までよりももっと遠くまで行ってみたり
今までよりももっともっと悩んでみたり
でもどこにもなくて 僕の中には何もなくて ただただ寂しくて
「誰かに愛されたい」だけの僕の心は日に日にボロボロになってゆく
家にいたってどこに座ればいいのかさえ分からくなって今
日も立ち尽くしていた


あれから半年が過ぎた夕暮れ 湖に映る夕日を見ていた
涙はなぜ枯れ果てないんだろう
この湖が消えてなくなるくらい泣いてきたっていうのに
こんなにも綺麗な夕日が涙で滲んで
どうしようもなく綺麗になってゆく
もう僕には何もない
「誰かに愛されたい」 そんな気持ちさえも
そして今思うのはただ 「誰かを愛したい」
作品名: 作家名:藤澤俊輔