小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

フィラデルフィアの夜に14

INDEX|1ページ/1ページ|

 
フィラデルフィアの夜に、針金が転がります。
それは街の生け垣の下にありました。
それは針金を卵形に丸めたもの。
誰にも気付かれず、転がっています。

転がっています。

ただ、転がっています。

そのはずでした。


 ころん。
歩道に、卵形の針金が転がります。
人々の雑踏は何のためらいも無しに踏み潰そう、そうした時。
 足が止まります。
ひぃ、と声と共に。
どこかしこに、止まる足と声が。
 足下にあるのは、針金。卵形の。
でも、そこから伸びるのは、釘。
鋭く、天を向く、釘。
まるで卵から生まれ出るように。
 そんな卵が、いつの間にか歩道に転がり散らばっていたのです。

 それらは誰かのいたずらと、捨てられ雑踏が続くも。
ひぃ、と声。
またしても卵。伸びる大きな釘。
いくら拾っても、転がっている卵が。
鋭い釘と供に。

 ある男が、生け垣の下を覗く。
そこにはびっしりと、卵。
生け垣の中まで、空間なく積み上がる、卵。
無機質な、命も、優しさも感じさせない、針金の。
少しの隙間も無く巻き付けられ作られた卵が。
長い、鋭い、釘を生むかのように、伸ばして。

 そして男ははっきりと見たと言います。
一つの卵から、もう一つ、卵が産まれてきたと。
 悪意を持ったような釘を突き出して。




 ある日、誰かが野鳥の巣を落としたと言います。
その時、卵が儚く砕けたそうです。
あの生け垣の辺りで。




 生け垣の下には今、何もありません。
毎日点検され、きれいなままになっています。
ただ針金が、誰かが掃き集めるかのようにいつも集まっていきているのです。

 ある日の事、誰かの足が止まり、声がします。
ひぃ、と。