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百年の白梅

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【百年の白梅】 前篇


 人間の寿命は長生きしたところで百歳そこそこ。幼いときに大人だった親戚も近所の人たちも次々に死んでいった。世代は変わり、その家の子供が継いだかと思いきや、彼らもまた子供をもうけ、何年かぶりに会ってみると幼児だった子がもう大人になっている。

 我が家にしてもしかり、家長として君臨していた母は高齢まで生き永らえたが、寿命には勝てず死んでいった。いつまでも母の娘という気分で暮らしていた私は孫にとっては婆。ばあばとよばれているうちに次第に年寄りのような気分になってきた。

 
 私が物心ついたとき生家の築山や畑にはいろいろな植物が植わっていた。その木のほとんどは私の知らない母の長兄が植えたものだと母は言っていた。家業を継げなかったその兄はやがて息子の元に引き取られて移り住んだと聞いているが私の記憶には全くない・・がその人が植えたという白梅が残っていた。

 私は子供の頃その梅の木に登って遊んでいた。梅の木は多分毎年実をつけていたのだろうが、その実は落ちるままに放置されていた。

 
 二十年あまり前、私の一家は国の政策で立ち退きを命ぜられ引っ越した。そのとき造園業者に委託して梅の木も一緒にやってきた。新しく整地した庭に移植された梅の木は以前にも増して活性化し蘇っていった。一時は枝が弱りかけてこのまま果てるのかと思われたが、生き返ったように大きな実をつけるようになった。

 この白梅はどれほどの年月を生きながらえてきたのだろう。静かに私の母や母の兄の生活をずっと見ていたであろう。明治を見、大正を見、昭和を見、そして現在平成に至ってもなお華やかに白い梅の花を咲かせ実をつけている。この先この白梅は私が死んでもまだまだ実をつけ、私の娘がおばあさんになってもまだ元気でいるのかもしれない。

 
 人も世の中も瞬く間に移り変わる中、我が家で唯一変わらぬものそれはこの古木の白梅だ。二月が来ればまた梅の花をみることができる。いつまでも衰えず我が家を見守っていてほしい。


後篇につづく
作品名:百年の白梅 作家名:笹峰霧子