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股野 特大
股野 特大
novelistID. 38476
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私鉄沿線物語

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土曜日の夜
中谷は課長に付き合い中洲へ出た。
「中谷君は独身だっけ?」
「はいそうです。一応、彼女はいてますが」
「いてます・・・か。まあ、福岡の女の子もかわいかよ~。不自由しとらんと?」
「まあ、してるっちゃしてますけど・・」
中谷は彼女の顔を思い出した。
福岡へ出てくると言ってたが「旅費はあんた持ちやで」と言われてそのままにしていた。
「相席バーがあるんやけど、中谷くんも行ってみる?」課長が言った。
「相席バー?」
「そうそう、最近、人気があるっちゃんね~。いこいこっ!」
「面白そうですね・・行ってみましょうか」
中谷は課長とともに繁華街を横断する那珂川を渡り中洲へ歩いた。


相席バーは女性は無料というシステムになっている。だからなのか、店内には女性が溢れていた。
女性無料の仕組みは男性が30分3000円という高い飲食代を払うからだ。
男性が女性の分を払ってあげているのと同じだ。
店側としては高い給料で女の子を雇う必要もなく、これまた助かる。
簡単に出会いの場を設けることで男性は鼻の下を伸ばし、何かの出会いを求めて入店するのである。
女性も無料という気安さもあり、それに自由に帰ってもいいというシステムだから案外、利用者も多いのだ。
現代的な出会いといえばネットの出会いにも似ている。
今は気軽に男と女、機会さえあればカップルは誕生しやすい。
店は中谷が想像するより活気があり賑わっていた。


「あちらのお方と相席よろしいですか?」店内スタッフが由美に促したのは中谷のテーブルだった。
「こんにちは~」同僚と来ていた由美は二杯目のカクテルを飲みいい気分でスタッフが指示したテーブルに向かった。
「あれっ?」
最初に気がついたのは中谷だった。
「この間の・・・」名前までは出てこない。
由美は「あらっ?どこかお会いしましたですよね・・・たしか・・不動産の・・」
偶然の再会に満面の笑みを浮かべた。

「なんだ知り合いなのか、中谷君」課長が言った。
「お客様ですよ。この間、部屋の方まで案内したんです」
「そうですか・・それはそれは、ありがとうございます」課長は急に頭を低く愛想笑いを浮かべた。

「せっかくナンパしに来たのにお客様じゃな・・俺・・すぐ帰るから」課長は由美に聞こえないように中谷に耳打ちした。
「ええやないですか~」
「あかん、あかん。仕事とプライベートは分けと~と」
由美は初めてここに来たことや、東京から来たことを話し、中谷は大阪から短期でこっちに来てるんだということを会話した。
そして、間もなく30分もしないうちに課長は退席した。

「どうしましょうか?」中谷が聞いた。
「ここ、高いでしょ?他の店に行きましょうか?」由美が言った。
「由美ちゃん、私帰るから」と由美の同僚は言い残し、店を出ると二人っきりになってしまった。

「屋台でもいかへん?」
「いいわよ。福岡の名物だもんね。まだ行ったことないし」
「そうなんや、僕もよう知らんけど寄ってみましょうか?」
「うん!」

偶然の出会いでもあるけど年齢は近いし、同じ県外からのよそ者同士で中谷と由美は気があった。

川沿いに並ぶ屋台の中でも白いちょうちんの店は混んでいなかった。
「ここでええ?」
「どこでもいいわ。なんにも知らないし」
「僕もよう知らへんけど、まあええわな」
店内はラーメンだけでなく、焼き鳥や居酒屋のようなメニューが並び中谷はビールを注文した。
「私、明太子焼き」
「それ、どんなん?」
「よく知らないけど、明太子は博多名物でしょ?」
二人は狭い屋台の長椅子に並んで座り、ビールを飲み始めた。

「ど~ですか、住み心地は?うるさくないですか?」
「いえいえ、あの部屋は気に入ってるのよ。ありがとうございました」由美はちょこんとお辞儀をした。
まさか、部屋の窓を開けて走る電車に見られてエッチしてる時が快感なんです・・なんて言えない。
「福岡はいいとこですね~。なんか開放感があって」中谷が感想を漏らした。
「同感!なんか全部目新しくて新鮮だわ」
「えっと由美さんは彼はいてはるんですか?」
「いいえ、まだこっちに来たばっかりだし誰も居ないわ」
「もったいない~~!」
「またまた、お上手なんだから。中谷さんは?」
中谷は梨沙子の顔が浮かんだが自分も一人だと言った。そして冗談半分に
「お客様だから口説いちゃあかんよね~」と言った
由美は笑いながら「いつでもどうぞ。もしかして今、口説いてらっしゃるの?」と返答した。
それをきっかけに中谷も急に打ちとけ、お客様から友達として話すようになった。
大阪のこと、東京のこと、福岡のこと、二人には全て新鮮な話題だったので話は盛り上がった。

午後11時を過ぎ私鉄の駅に向かった。
「由美さんとは急行、一駅だけ一緒ですね~」
「あら中谷さんもこの電車?」
「僕は二番目の停車駅で降ります」
「じゃ、私のマンションの横を通って帰られるのね」
中谷は急に小声で由美に向かって
「実は気にしてたんです。あのマンションの横通る時、顔でも拝見できへんかなぁ~って」
由美はどきりとした。
まさか私のオナニー姿を見たとか言い出すのではなかろうかと・・。
「でも、あっという間に通り過ぎるんでダメですわ」
由美はなぜだかホッとした。
「今度、通る時、目を皿のようにして覗いてみますわ」
「いやね~。覗きは罪ですよ中谷さん」そう言いながら、もしも中谷に見られてたら~と妄想したら由美は子宮のあたりが熱くなった
中谷は笑ってごまかしたが、明日からまた楽しみができたと思った。
それから由美は急行が最初に停まる駅で降り、中谷は次の駅で降りた。
そして二人は電車の中でラインの交換をした。

作品名:私鉄沿線物語 作家名:股野 特大