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すずめの親子

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田畑の中に神社と農家とが散在する、とある田舎。
 これら農家の一軒の屋根瓦の下に外界から守られたすずめの巣があり、すずめのお母さんが一生懸命に世話してその子供たちがすくすくと成長していたが、「大きくなったら飛ぶ練習をするのよ!」とお母さんから言われ続けてきたその日が、ついにその子供たちにやってきた。
 まだ人間にじゃまされない早朝は、すずめたちのものである。
 子供たちは不器用に飛んでは休みを繰り返し、しばらくして、道路を這っているイモムシにお母さんが目を付けた。
「あれを捕まえてみましょう。あれは、私がお前たちに与えてきた食べ物が、この世界で実際に動いている姿よ」
 人間にはチュンチュンとしか聞こえない言葉でお母さんが言うと、子供たちは不器用に飛んで行ってイモムシを捕まえて、分けてもぐもぐと味わった。
 そして元気を回復すると、子供たちはまた不器用に飛んでは休みを繰り返し、しばらくして、畑の上を飛んでいる一匹のチョウにお母さんが目を付けた。
「今度は、あの飛んでいるのを捕まえてみましょう。あれは、さっき食べた生き物が大きくなった姿よ」
 人間にはチュンチュンとしか聞こえない言葉でお母さんが言うと、子供たちは不器用に飛んで行ってチョウを何とか捕まえて、分けてもぐもぐと味わった。
「すごいなあ、お母さんは何でも知ってるんだなあ」
 子供たちが感心すると、お母さんは自慢げに答えた。
「そりゃあ、お母さんだからね! さあ、また飛ぶ練習に戻りましょうか! 飛ぶって気持ちいいでしょう?」
 と、そこに、目立つ生き物がやってきた。人間のおじいさんがずっと歩いてきて畑仕事を始めたのだが、それを見て子供たちが一斉にいわく、
「あの生き物も、早く大きくなれるといいね!」

【完】
作品名:すずめの親子 作家名:Dewdrop