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女の開花前線

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同級生も初体験にまちがいない、少女はそう直感した。
この男はダメだと分析した。愛もしくは、愛のような感情が全く感じられないセックスだった。同級生の言葉は豊富だがそれだけではむなしい。同級生のセックスのやり方は受け入れられない。
「あれ、ええ匂い、するなあ、あの花、エンゼルトランペットやね」
「ちょうせんあさがお、て言うんや」
「ちょうせん、あさがお」
17歳の少女は、抑揚なしで、ちょうせん、と言えて、ほっとした。
「アサガオやけど、夕方に開いて匂うねん」
「おかしいね」
「薬にも毒にもなるやて」
「詳しいのね」
 花の話題が、二人の最後の会話となった。物語は終わった。続編はなく、同級生とのことはすっかり忘れた。あこがれさえもなくなった。最初のミスマッチは忘れるべきものだったと総括した。同級生も、二度と声をかけてこなかったから、この喪失感、不安定な気分こそ、思い出したくない。


つぼみの女子大生

17歳の時のことは、後から思うに、奇妙なセックスだった。相手の同級生を思い出すことはなかったが、猥談に興奮したことや道具を伴う初体験は、その影響がながく無意識の世界に住み着いた。
大学生になって、自由が手に入った。親もあまり干渉しなくなった。男女の付き合いも目のあたりにするようになり、人間関係が性的なものを含めて重層化した。
アルバイトは大人の社会への契機となる。社会との接点が広がっていく。二番目の男は、アルバイト先の店長、女子大生にとって、五つも違うと、もうすっかり大人である。
この男には、男性経験がないといってよいような女子大生は、遊び相手に申し分ない。遊ばれてると思ったが、とにかく、お姫様、お嬢様扱いだったから、とても居心地が良かった。アルバイトを終えたら、夕食までには帰宅しなければならないので、結局、授業のあと、会うことになった。
同志社大学は御所の北側にある。今出川通と烏丸通の角は、いかにも人目につく。そこで、烏丸通を少し南へ下がって、御所の塀が続くところで落ち合うことにした。そこなら、目立たない。
男は車で待っている。車に乗り込むと、御所を周る。梨木神社の北側は静かで人目につかず、昼間は営業社員が油を売る場所であり、夕方には、恋人たちの愛の交換場所となる。
車が停まると、身構えた。男は肩に触れ、髪をなでた。
男は口づけた。女は男の唇の感触を味わった。
「始めてではないやろ」
女は男の質問の意味が理解できず
「そうね、わかる」
と唇をとんがらせてごまかした。
キスははじめてだったが、そう言ったら、軽く見られそうで嫌だった。これが男に対する最初のウソだった。
「そうやろうな、初めてではないやろうな」
女子大生は微笑んで、ごまかした。
「処女かと思うてたけど」
「処女がいいの」
「そんなことない、ない、ない」
不思議な会話だった。
キスが激しくなった。もう止まらない。
「どこか、ゆっくりできるとこ、いこか」
「うん」
岡崎のラブホテルへ行く。京都のラブホテル街は、岡崎か名神の京都南インターであると男は解説した。
ラブホテルに入りながら、女子大生は不機嫌を装った。男が機嫌を取ろうとするのを楽しんだ。
この男を二番目の相手に選んだ理由は、小太りで勉強が嫌いで、とても女性にもてそうにないことだった。初体験の同級生に振られた疑似失恋の苦い経験から、絶対優位に立てる男を選別したのだ。
この男はまったく自信というものがない人間で、セックスもまことにコンプレックスの塊のようだった。
スキンと道具とはかならず持っていた。車に常備している。ほかの女性と遊んでいるのだろうが、私はこのブ男と遊んであげるのだと割り切った。
穏やかな男だった、穏やかなセックスだった。
「クリームを使わないの」
と男に尋ねたら、男がきょとんとなった。
「変な癖がついてるなあ、なんでや」
女子大生は自分の言葉をうまく説明できず、おかしくなって笑ってごまかした。
男は、女子大生を眺めるのが趣味、眺めるのは徹底していて、奇妙なセックスだった。女子大生がバイブレーターを使っていくのを見るのがいちばん興奮する、と言う。
男の性欲を満たしてあげるのには抵抗がない。見させるのは、優越感すら生まれるから、女子大生には都合がよい。セックスしながら、男を見下すことができるのは、願ってもない状況設定だ。自分をかわいがるのは当然だ、見下すことができるのは幸福である。
男が女子大生の授業の終わりを待っているというのも気に入っている。誰であろうと、自分を必要としている人間がいるのは気持ちがよい。
眺められるのも心地よい。眺められながら、髪をなでたり、表情をつくる。足を開いたり、もっといやらしい恰好をしようと考えたり。女の方が主人公である。
男は、友人が大人のおもちゃの店をしているからと、様々な道具を持ち出しては女子大生に試すのだった。この男はとてもやくざには見えないが、このような友人が多いのならアウトローかと少し怖くなる。
大人のおもちゃは楽しめた。いろんなものを入れてみたくなる。下着もその店から買ってきては、着替えてほしいと頼むのだった。
「こんなのやくにたたへん」
 男をなじる。乳首を隠すばかりのブラジャー、同じように小さな三角形の布が充てられているひものパンティ。
「頼む、頼むから着てやってくれや、頼むさかい」
 女子大生が着替えると、足元に寝そべって、男は見上げる。女子大生は堂々として、媚びを売らなかった。ふと、kを思い出した。足で男の顔を踏みつけるまねをする。快感だった。そんな動作ができるとは思いもしなかった。初体験だった。
 ここが勝負所や、と女子大生は考えた。言いなりになったら面白うない。けんかになってもよいのだ、いつ別れてもよいのだ、そう言い切れる自信があった。
眺めるのがすめば、男は道具を使ってオナニーしてくれと頼み込む。道具には抵抗はないし、あきない。
バイブを使っていると、体がけいれんしはじめた。
「よがってんやな」
「よがってる」
「よがるのは始めてやろ、いやらしいやつやな」
「あんたがしてほしいというからや」
「いやなんか」
「こんなん、つまらん」
女は男に抗議する。これはまともではない。
「いや、っていうてみい」
「いや、もういや」
男は、
「いやなのに、なんでこんなことしてんのや、お前の方がいやらしいわ」
「そんなことない」
男は道具を抜くと、指を入れてきて、出し入れする。女はバイブと違う感覚に襲われる。
「ああ、いい、もっとしてえ」
「ほんまにいやらしい、足、ひらいてみい」
女は足を思いっきり開く。
「いやらしいわ、足、開いて」
「ううーーん」
女は呻く。
「こら、ばいた」
意味がよくわからないが、ののしられていることはわかった。どこの方言だろうと懸命に考えた。この男は危険かもしれないと警戒心すら芽生えた。
「いま、いやらしいこと、考えてたんやろ」
この男は不思議だ、体を責めてるのに、頭も責めてくる。
言葉がこれほど効果的だとは思わなかった。
「おまえはな、犯されてんのや」
女は首を振ったものの、男の責めを受け入れていた。女が抵抗しないのをたしかめると
「犯して、と言え」
女は拒む。
「犯して、ていうんや、言うてみい」
作品名:女の開花前線 作家名:広小路博