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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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6月23日

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 ライブ終了後、ヒューゴがジミーに尋ねた。
「なあジミー、今日でいくつだ?」
 トップスを全て脱いで、彼は答えた。
「23だよ」
「俺たちより1年多く生きてるな」

 そうしていると、バックステージに1人の男性が現れた。彼は、ライブの客席に居た、サングラスをした長髪の男である。彼の登場に、その空間にわずかな緊張が走った。
「どうも」
 男は、軽く挨拶をした。4人も、つくり笑いに近い顔で
「ああ、どうも」
 と返した。その直後、彼はおもむろにティムのもとに近付き、話し始めた。
「実は以前、君たちのデモCDを聞いたことがあってね。君たちのようなサウンドとヴォーカルは、僕の心をつかんで離さない。それで今回、ライブを聞きに来たのさ」
 その口調と外見の様子は、伝説級のロックバンド「Φ」(ファイ)のリーダー、ジョアキム・ウッドに似すぎるほど似ている。フィルは緊張しながらも、その不思議な雰囲気の男性をじっと見ていた。
(でも、まさか、ジョアキムさんが僕らみたいな素人同然のバンドのライブなんか見に来るわけがないよ…)
 楽器隊も、その男性に緊張の眼差しを注いだ。

 彼に話しかけられたティムは、勇気を持って質問をした。
「失礼ですが、『Φ』のジョアキム・ウッドさんではありませんか?」
 その場は、先ほどよりも凍てつくような緊張に包まれた。
「いや、違う」
 彼の否定に、彼らは愕然とした。
(えっ、ただジョアキムさんの服装をまねただけの、素人の冷やかしだったのかよ…)

 しかし、その男性は再び話し始めた。
「僕は今日、エウレカレコードの社長ジョアキム・ウッドとして、いいバンドをスカウトしに来たんだよ」
 エウレカレコードとは、ジョアキム・ウッドが創設したインディーズレーベルである。謎の男性が本物のジョアキム・ウッドであると知り、青年たちはお互いに顔を見合わせ、あらためて大物ミュージシャンに目を向けた。

 ジョアキムは、ついにこう言った。
「どうかな、僕の所で一緒にやらないかい?歓迎するよ」

 4人の答えは、一つだった。
作品名:6月23日 作家名:藍城 舞美