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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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桜の名所で

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 そんな彼女の姿を見ていると、彼女に抱かれた赤ちゃんが再び私のほうを向き、右手をしきりに動かしました。若い母親はわが子に目を向けると、
「この子、あなたに手を振ってるみたい」
 と言って、ほほ笑みました。私も、赤ちゃんに向かって手を振りました。するとその子はうれしそうな顔で手を動かしました。私は、すっかり赤ちゃんの愛らしさに見とれてしまいました。

 しばらくすると、その女性が、ポケットからスマートフォンを出すと、何やらいじってから
「ねえ、これで写真を撮ってくれませんか」
 と頼んできたのです。もちろん、私はOKしました。彼女は写真の撮り方を教えると、スマートフォンを私に預けました。私は美しく撮れる位置を選んで、シャッターボタンを押しました。撮れた写真を見ると、彼女は
「まあ、素敵なショットね」
 と喜んで、保存しました。
「今度は、あなたを撮りますね」
 私は、女性を撮影した場所と同じ位置に立ちました。女性は、シャッターボタンを押しました。そして、撮った写真を私に見せてくれました。被写体となった私も満足しました。

 そのあと、私たちは少し場所を移動して桜を見物しました。その途中、女性は、つぶやくように言いました。
「このうっとりするような光景、最愛の人とも見たかったわ…」
「最愛の人?」
「ええ。彼は4カ月前、階段で同業者に突き飛ばされて、次の朝……」
 それを聞いて、私は胸がきゅうっと締め付けられたような感じを覚えました。
(さっきの彼女の涙は、その人のことを思い出したからなのね…)
 心の中でそう言うと、私は思わず彼女の背中に手を当てました。
「彼も前に、『春に日本の桜を見たい』と言ってた」
 私は、彼女の背中をさすりました。彼女は、黙って目を閉じました。赤ちゃんのほうは、母親の胸の中でぐっすり眠っていました。


 最後に、それぞれのスマホで、4人の集合写真を撮ってもらいました。別れ際、子連れの方が私に言いました。
「私、今日のことは一生忘れない。夢のような景色を見て、美しい服をまとった、優しい人にも会えたから」
 年若い子のほうも、明るく言いました。
「ピッパ、日本に来てよかった!こんなきれいな景色見たの、生まれて初めて」


 桜の名所での、非常に印象的な出会いでした。
作品名:桜の名所で 作家名:藍城 舞美