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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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「背中痛がったこととか、覚えてます?」

尋ねられて首を振る。昨夜、憑依されている間の記憶はまったくない。覚醒するまでの間、伊吹は焼かれた屋敷の中で女とともに逃げ回っていたのだ。

「怖かったですね」
「うん。すごくかわいそうだった…」

同じものをみた瑞の横顔にも、暗い影が落ちている。子どもと一緒に殺された女…。

「夢の中で、助けたくて手を引くんだけど、だめだった」

無念だったろう。それは伊吹らが想像する何百倍も。死んでなお、殺し続ける。安らぎの中で静かに眠ることのできない魂。

「供養って、どうしたらあのひとは救われるんだろう」

もう命は戻らない。本人の命も、子どもの命も。

「鬼になったものに、どんな供養も意味ない気がします。もう遅い、というような気が」

瑞の言葉に、伊吹は気分が沈む。そうだ。何十年、何百年も、恨みの念だけで在るものに対して、生きている人間が何をしても無駄…。平穏がおとずれるとすればそれは、子どもを失って絶望し、子孫の絶えた古多賀一族の姿を見るそのときだけではないのだろうか。

「夜叉の面みたいな顔をしてた。もう人間だった頃の温かい感情なんて、忘れてしまっているんだと思う」

秋空を見上げる瑞が、まるで独り言のように呟きだす。

「殺しつくすまで…終われない……終われなかった……。俺はどうして、人間に戻れたんだっけ……」

遠くを見つめる瞳と、わけのわからない言葉。

「須丸、どうした」