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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 後編

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「先輩!」
「どうしたんですか!?」

いたい、と呻くような声が伏せられた口から発せられている。上体を倒した伊吹の右腕が、背中に回っている。

「いたい…!」
「先輩、どうしたの!?」
「いたい…背中…が、いたい…」

しきりに背中を痛がる伊吹を前に、郁らはどうしていいかわからない。

「襖が!!」

悲鳴じみた志帆の声に目をやると、暗闇に慣れた郁の目が、静かに開いていく襖の映像をとらえる。す、す、す、とゆっくりゆっくり、ぽっかりとした暗闇の隙間が広くなる。どんどんどん、と心臓が肋骨を叩く。開く。入ってくる。


「い゛た゛い゛ぃぃぃぃ!!!!!」


叫んだ伊吹の悲鳴と同時に、襖の隙間から血まみれの手が現れ襖を掴んだ。赤く汚れた、がりがりの指先。その爪先が襖の表面をがりとえぐった。

「入れるな颯馬!」
「アイ」

瑞の指示とほぼ同時に、颯馬が何かを襖に投げつけた。音からして、たぶんいみご様のときにも使った玉砂利だ。手がさっと引っ込み、電気がついた。眩しい光が弾けたと同時に、瑞と颯馬が襖に手をかけた。追いかけようとしているのだ。しかし。


「こないでえぇぇぇッ!!!!」


獣じみた悲鳴があがり、全員の動きがとまる。伊吹だ。背中を抑えたまま布団に顔をうめ、身体中を激しく揺らして荒い息を繰り返している。

「先輩、大丈夫ですか?」