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御手紙 葉
御手紙 葉
novelistID. 61622
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絵を描く女

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私は海岸線を歩きながら、彼女のことを考え続けていた。彼女は黒髪が綺麗な若い女性で、私の古くからの友人だったが、最近大学を辞めて、美術大学に入り直したということだった。私はそれに関して、心から賛成の意を伝えたいと思っていた。何故なら、彼女はずっと昔から絵を描き続けていて、その才能は疑いようもなかったからだ。
 彼女は何か話す度にいつも将来の夢と現実を、嘆きながら話していて、普通の社会人に進むのかどうか、悩み続けていた。史学部に通う私は、あまり何も考えずに大学生活を過ごしていたが、趣味である読書と小説執筆を第一に考えるべきだ、と彼女はよく語ったのだった。
「だって、そうじゃないかしら? ぼんやりと過ごしていたって駄目よ、自分にできることを突き詰めてやらないと――時間はどんどん過ぎていくわよ?」
 全くその通り、だった。だが、私には今一つ実感が湧かずに、話半分に聞く程度だったのだけれど。しかし、彼女が一大決心をしたことによって、再び考える機会が訪れたのだった。私には一体、何ができるのだろう? 何がしたいのだろう? そんなことを考えていると、今まで気付かなかった選択肢が、自分の前に次々と現れてきたような気がした。
 海岸線はゆるやかに弧を描くようでもあり、水がとても澄んでいた。気持ちの良い青空が広がって、私はただひたすら、思考の深くへと沈んだ。そうして物思いに耽りながら、歩き続けていたが、ふと喉が渇いたことに気付いた。
 駐車場の近くへと戻ってきていたので、私はそこから切り上げることを決めて、砂浜を道路へと向かって歩き出した。あまり人は混んでいなかったが、レジャーシートを広げて寛ぐ人など、なかなか活気があったのだ。
 食堂に行くと、数台の自販機が並んでいる、その店先が目に付いた。私はそこでコーラを買って飲みながら、食堂のテラスで数人の若者が談笑しており、カレーライスを食べている様子をぼんやりと眺めた。
 心から、その時間を満喫しているようだった。私はどうなのだろう? 毎日を何となく生きて、目標もなく、無為に過ごしていないだろうか?
 できることを、精一杯やること……彼女にそう言われたからそうしようと思ったのではなく、ただ私は本を読んで小説を書くことが好きだったので、それを一番にやろうと思ったのだ。
 マウンテンバイクへと跨ると、海岸を後にした。物語の構想が大きな歯車のように回り続けていたが、何が書きたいだろう? と考えていると、彼女の姿がふと浮かんできた。美大に通う一人の女性について書いたら面白いかもしれない。そう思うと、私は自然と口元が綻び、どこか口笛を吹いてしまうのだった。
作品名:絵を描く女 作家名:御手紙 葉