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霊感少女

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多恵





今回の霊体験は
雅人が
生き霊を連れて
部屋に帰ってきた事から
始まった





[生き霊]の正体は

菊地が 愛した女性を
強く想い過ぎ
多恵の魂を
弱った体から
引き寄せてしまった事が
原因のひとつに ある


呼び寄せられた
多恵も また
菊地を 愛し

苦しむ菊地を
救いたい一心で
[生き霊]となり
菊地から 離れられずに
居たのだろう





菊地と多恵は
父親の借金から
出会い



いつしか
父親の借金に苦しむ
壊れそうな多恵に
菊地は 同情心が芽生え


多恵の相談相手に
なっていた


年の差も 職業も
越えたのは
多恵の方だった


多恵は 自分の置かれた
状況に 堪え切れず
救いを求める様に

菊地を 誘い出し
男女の契りを
交わした


菊地もまた 多恵を
守りたいと
思っていた


数日後
借金を苦に自殺した母親
蒸発する父親

多恵の精神は破壊された


菊地が多恵を発見した時
菊地の目の前に
繰り広げられた光景は
凄まじい物だった


菊地は 壊れた多恵を
抱き寄せ
守り通す事が
出来なかった己を
憎んだ


多恵の母親を自殺に
追いやった
借金の取り立てを
していたにも
関わらず

非難を浴びるのを
承知で 葬儀に参列した
菊地の行動は
自分への 戒めだったに
違いない



勿論 多恵の見舞いも
許されず

菊地が 多恵を
眺めていた場所は


多恵が雅人と相楽を連れ
病室を 指差して
立ち止まった場所だ


多恵は菊地が居た事を
知っていたのだろう




菊地の強い念に
引き寄せられた時


多恵は 菊地を誘い
性行為に及んだ事を
悔やんだ


体を重ね合わなければ
菊地は これほどまで
多恵に縛られずに
済んだだろう


苦悩する菊地の姿を
眺めていた多恵は
[生き霊]となり


多恵の生き霊は
[雅人に助けを求めた]
のだろう




純粋だった 二人の愛は
互いに悔やみだけを
残し 絡み合う


複雑に交差した
不器用な愛に
縛られて




先に手を離したのは


多恵だった



菊地を 助ける為に


相楽に 嘘まで
つかせて



相楽は こんなにも
淋しい[生き霊]が
あるとは
知らなかった



[ありがとう]


多恵が 最後に
伝えて来た言葉


微かな笑みを
浮かべて




[生き霊]になるほど
強く求めてくれた
深い菊地な愛情が

多恵にとったら
幸せだったに
違いない




今でも 病院のベッドで
感情を失くした
少女のままだとしても


作品名:霊感少女 作家名:田村屋本舗