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田村屋本舗
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novelistID. 61089
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感染

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第五章糞





獣道から
畜生道へ



上司の怒鳴り声が
脳天を突き抜ける



酷い二日酔い



有能な貢献者は
給料泥棒に化す



無能の証明





初めから
能力など
有りはしなかった




スーツを着飾り
モダンなネクタイを絞め
知的な眼鏡を掛ける


オーダーした皮靴を履き
ローンを組んだ
腕時計を嵌め



路上に立ち尽くす



グラマラスな女性達が
闊歩するビジネス街



硝子張りのビル



憧れていた
高級外車ショップの前で



名刺入れに隠す
銀行名が刻印された帯を
握り潰した




高望みから
覚醒すれば


高級外車ですら
鉄屑に見え


伝書鳩なみに
括りつけられた
発信機が鳴る



会社の部品
携帯電話



牛の耳に打ち込まれた
肉質を物語る
商品管理タグ



首から提げた
社員証ID



糞喰らえ





神経を破壊する



脅威な感染力



クルクルパーウィルス




禁断の酒を
解禁しても



浸透する菌は
増殖の勢いを増し



中毒になる



携帯電話の電池パックを外し
些細な抵抗に浸る



超ミニスカートの
女子高生



長い脚をO脚に
尻を突き出し
窓硝子にへばり付く


巻き髪の崩れた
茶色い髪を
紺色のブレザーに
靡かせ


「可愛い~」


何気なく耳に届いた
女子高生の声に誘われ
窓硝子を覗いた






小さな黒い子猫が
窓硝子越しに
女子高生の指先を
掻き毟る


何匹も重なる
黒猫の軍団


硝子ケースの中


一匹だけ
女子高生に尻を向け
店内を見ている黒猫


暢気な顔で
欠伸をする





クルクルパー
発見




店員がケースの鍵を開け
一斉に女子高生を裏切る
黒い軍団が愛嬌を振り撒く


「どの猫にしますか?」


我先にと
夢中で仲間を押し退ける猫達



逃げ遅れ
踏み潰される
愛嬌のない子猫が


不細工な顔で
仲間に猫パンチをする



「一番 不細工な奴」



店員に腹を持たれ
ジタバタする子猫


細く長い脚で
店員の腕を
蹴り上げていた



カウンターに置いた
契約書の紙の上を
うろうろと歩き回る


文字を書き込む
ボールペンに
纏わり付き


袖口のボタンに
噛り付く



猫を飼う為の
簡単なアドバイスを聞き
餌を購入



脇の下に
頭を突っ込む猫


軽く腕を締め上げると
ムキになって
後退りする猫が


コロンと仰向けに
転がった



クルクルパー猫



命名
『不細工ブー子』





俺の家に
帰ろう




青いフライパンに
敷き詰めた
パンティー



ブー子お気に入りの
寝床



確かに
便利なフライパンだ




重ねた雑誌を攀じ登り
小さな爪をシーツに引っ掛け
ベットの上に這い上がり



不細工な表情で
顔を顰める



「ミ~」



ご機嫌な鳴き声



「…ミーじゃねぇだろ」





糞垂れやがったな
こんちくしょう




~END~
作品名:感染 作家名:田村屋本舗