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ふしじろ もひと
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『遥かなる海辺より』第2章:ルヴァーンの手紙

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 夕方に戻ってきた舟はどれも豊漁で、その夜私は大変な歓待を受けた。本来の力強さを取り戻した海辺の民の姿はまぶしくさえ見えるほどだった。その席で披露された武骨ながらも生き生きとした踊りのリズムを、私はさっそく採譜した。
 そして夜半近く、私は浜辺に出て人魚に会い、数日後には村を去ることを告げた。麗しき海魔は少し寂しそうに微笑むと、あの幻妙な声でありがとうといった。あの初めての夜に聞いたのと同じその声は、けれどもう私を絶望させることはなかった。そして彼女のその様子に、私もそれまで迷っていた決心を固めることができた。

 私は人魚にアギのことを話した。話すつもりが彼にないことは承知していたが、そのままにしておけば彼の真意を知らぬまま、この異類の姫が何百年も過ごすことになると思うと、黙っていられなかったのだ。
 麗しき妖魔は涙ぐみ、小さな声で彼の名をつぶやいた。けれどすぐ、アギを悲しませてはいけないといって、微笑んでみせたのだった。そんな彼女に、私はルードの踊りのリズムを聞かせた。きっと私はここへ戻る、こんな音楽をもっとたくさん聞いてもらうつもりだからというと、彼女は嬉しそうな顔で、待っていると応えてくれた。

 最後に人魚はこういった。あと二百年もすれば自分の体内の卵も孵り、最後は自分も大洋に戻ることになる。母が自分を生んだその深みは血族の生誕の海であると同時に墓所であり、ただ一度母の顔を目にしたかけがえのない場所なのだからと。
 それでもきっと自分の仔はこの浜に戻ってくるだろう。先祖の中にも自分ほど幸せに暮らせたものはいないと思うし、自分の話を聞けば我が仔もそう思うに違いないからと。たとえ寿命が異なろうと、自分たちも人間と同じくこの海辺に世代を越えて戻ってくるのなら、種族の宿命は重なることになるのだからと。
 彼女の話を聞きながら、私は銀河を見上げていた。生きている間には見られないはずのその光景が瞼に浮かび、それが実現することを星々に祈らずにいられなかった。



 ルードでの出来事についてはいくら書いても書ききれない心地さえするが、すでにこの手紙はあまりにも長い。あとは帰国してから直接話すべきだろう。
 けれど帰りは少し時間をかけたいと思う。私はルードへと急ぐあまり、途中の町や村をすべて素通りしてしまった。それらの町や村にも、ルードの民の踊りのようなかけがえのない音楽は息づいているに違いない。そんな日々の営みから生み出された音楽を集めて広く紹介する。これが私の進むべき道だと思うのだ。
 帰り道だけでどれだけの成果が得られるのか。それも踏まえて今後のことを話し合えればと願っている。再会の日を心待ちにしている。

                       あなたの友
                       ルヴァーン



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