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SPLICE 翼人の村の翼の無い青年 <後編>

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フと気になった。
この村に白い翼を持った者がいるかどうか。
そう言えばまだ見ていない。
白い色が入った者は見るのだが…
「だって動物だもん」
とはヴィラローカに言われた言葉だった。
「こんな土地で純白の翼って目立つじゃない?狩のときに逃げられちゃうし、場合によっては標的にされやすくなるよ」
翼人の翼は巨大だからなおさらか。
「私ほど真っ黒って言うのもどうかと思うけどね。…んー、でも純白の翼ってきれいだろうね?」
僕の表情を察してか、最後に付け加える。
僕の胸元に下がる、大きな純白の羽根。
この持ち主はその翼自体が純白で、自ら輝いているようだった。
「ヴィラのお母さんって翼黒かったの?」
翼を消したままの背をふと見て今は無い黒い翼を思う。
『自ら光るような純白の翼』と対するのは『全ての光を飲み込む闇のような漆黒の翼』のようだけれどもヴィラローカの翼は艶のある感じだったから、光も反射してしまいそうだった。
それでも黒かったけれど…というより。
日の光の下できれいな状態の翼を見ていないかもしれない。
朝焼けや夕暮れ時の光とは違う、昼の日の光の色の中で見たのは…事件の時だけだ。
あの時翼は既にぼろぼろだった。
「私の母親?確か、茶と白の模様が入っている感じだったと思うなぁ」
そういえば幼い頃に分かれたんだっけ?
「半分人間だからって関係ないと思うんだけど、幼い頃は茶色一色だったし今は真っ黒だし」
「混血の人は幾人か出会ったことあるけれど、混血だから翼の色や模様が親と似ないってのはあまり聞いたことが無いなぁ…」
全く聞いたことが無いわけではないけれど、あそこまで見事な漆黒の翼というものは翼人側の親に何かあるとしか思えない。
もしくは偶々遺伝子上なにかおこったのか…
あのカティサークと同じ父親を持つなら考えられなくない。
「ま、綺麗だからいいでしょ?」
「そうだね」
軽く笑って終わる。
しかし。
もしかしたらヴィラローカにも何かカティサークのような秘密、というか特徴があるのだろうか。

「こう言っては何だけど、カティも不思議なところ多いけれどヴィラも不思議だよね」
姉弟の家にいるときは仕事を忘れられて程よいリラックスできるし、しようと思った。
カティサークと2人になったあるとき半分笑い、半分まじめに言ってみる。
実のところ、この大陸においてハーフというのは余り受け入れられないのが常の存在だ。
もちろんソレに類して、異種族間の恋愛、夫婦というのも多少偏見がある。
僕はクォーターで、しかも神官としての外見がはっきり現れているから(というより「伝説の神官」の唯一の末裔だから)扱いは酷いことは無かったけれど、また他の人よりも優れた点があるというのが深層心理で恐怖となって迫害されているのが多い現状だ。
…と、もので読んだ。
そういったもので耐え切れなくなり神殿にやってくる者も結構いる。下働きなどで使ってもらえるので。
まぁ、『自由の中に束縛を』という大海の神の基本的な教えもあるしね。
人の心にある壁は認められているようなものだ。
…と翼人は『天空の神』の従族獣か。
天空の神の基本的な教えは『束縛の中に自由を』だからちょっとちがうかな。
いや、生活を見ていて、見ているだけでも分かる規則というものがいくつも存在していた。でも心を束縛する程のことは無い。
これが、天空の神に使える従獣族か。
「僕が言うのも変ですが、変な人ですよね。結婚して村に戻ってきた後変わったのもあるんですが、それ以前も他の人とは違いましたね」
例の話か。
「言い方悪いですが、この村の人のざっくばらんなところは実のところ見かけだけが殆どです。スプライスさんはもう分かっていると思いますが」
僕は素直にうなづく。
実のところ僕のことを受け入れいるようで受け入れきれていない人々。
そのせいもあって、人の顔が覚え辛いのはある。
「それでも姉のざっくばらんさは本物だったのですが…帰ってきて立ち直った後は前以上になったんですよ」
そこで一息溜めて
「もしかしたら…」
と続けそうになるが、また辞めるカティサーク。
前もそんなことがあった気もする。
無理に聞いても仕方ない。
「そういえば、帰ってきた後家の中にある本を読み漁ってました」
篭っていた頃というから、他にやることが無ければひたすら本を読み続けられる環境ではあるか。
「これももうお分かりかと思いますが、父は『大地の神』を信仰する民族の人だったようですね」
昔ほどではないが、それでも珍しい。
この世界は『天空』『大海』の神が創造神と言われているが、実のところその昔の一時期信仰を禁じられたこともある『大地』の神もいる。
「家の中にある本で『大地の神』に関するものも多数あって姉さんも読んでいますし。ソレも関係あるかもしれませんね」
それとはちょっとが違うように思ったのだけれども…それはカティサークも分かっているだろう。
これ、と言い切れるようなモノも思いつかなかったのでそれ以上は僕も言わなかった。
?
?
「こんにちは」
僕も仕事をしないといけないと思い、家を出ようとしたところで一人の青年がやってきた。
ヴィラローカが怪我をしてから良く顔を見せるうちの一人でエ・リシュアという青年だ。
茶と緑茶の混ざった翼の色をしている。
ヴィラローカが怪我した場でも姿を見た。
今日も手に籠を持っている。
「いらっしゃいリシュアさん」
今日は家にいるカティサークが迎える。
その光景を見て、微妙な違和感を覚えた。
僕も、カティサークも、現状ヴィラローカも翼がないのにリシュアだけその背に翼を背負っている。
地上にいるときの翼人の翼というものは実に重そうだ。
…ではなくて。
ここは翼人の村で翼を持つ者の生活の場なのにこの家はそれを忘れる空気がある。
壁一面の本の数も理由の一つなのだろう。
そんな光景を見つつ家を出る。
今日もとりあえず村の中を歩き回って少しでも人を覚えよう。そして僕が何かを感じる相手を見つければいい…と思う。
現状僕が覚えた、顔と名前が一致する村の人は30人ほど。
あとは顔を覚えているだけ、もしくは見た気がするのが…数え切れないほど。
その覚えている人というのが、大抵「違うな」という感じにがする。
例えば『お母さん』『お父さん』とか。
使神官の従者は単なる奉公ではない。
神官に付き従い、家になんて帰ってこれない。
もしかしたら…そのまま神官の下で死ぬまで仕えるかもしれない。
仕えていながら他界した人はいないけれど、似たような人ならばいる。
家庭における重要な人なんて従者として上げられない。
そもそも、そういう人を望んではいないはずだ。
あと村長などには申し訳ないが、中年以上の人も選べない。
年齢を重ねたゆえの言葉を進言できるという長所はあるけれど、使神官とその守護者自体の年齢が相当なものだ。使神官のもとに仕える僕やブレースも外の世界で自らより年長の人を見ることは無い。
まだ自分の世界を作り変えることの可能な年齢くらいがいい。
となると…下は幼年から青年が好ましく、壮年はギリギリのラインだろう。下の幼年も言いすぎか。学校に通われていては教育の必要が出てきてしまう。