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レイドリフト・ドラゴンメイド 第24話 受難者たち

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 オルバイファスは、あきれた声。
『閑話休題! 1号! 』
「はい、何でしょう」
 さっきまで呆然としていたのに、1号、2号共に反応した。さすがだ。
『君たちの情報管制システムは、シエロとカーリ以外のチェ連人にも公開されているのだな? 』
「はい。地下要塞の病室で。
 怪我した人たちに見せています。見せたとしても、もはや戦力にならないでしょう」
 具体的には、シエロのような士官候補生。プロの将兵。軍属の民間人。地域防衛隊。
 あの地下要塞で戦った者たちだ。
「他にも、メディアが用意したニュース用テレビも。
 彼らは今後のスイッチアを率いる立場だ。その時に絶対に情報は必要になるから。
 これは日本政府からの要望でもあります」
『そうだな。だが、怪我人たちは、チャンネルの使い方がわかっているのか? 』
「チャンネルでしたら、見張りのPP社や医師達が変えると思いますが」
『そうか? ここにいる二人と病室さえやり取りできていないではないか。フェアではないぞ』

 量子世界のマップ。その中を移動する二つのアイコンが点滅し、自らをアピールし始めた。
「オルバさんのご両親ですか? 」
 2号がたずねた。
『いや、我が私設秘書だ。車の方がマイルド・スローン。飛んでいるのがジェニアル・アイという』

 新たなウインドウが2つ割り込んだ。
 その映像を見た時、一瞬何が写っているのかわからなかった。
『はじめまして。マイルド・スローンと申します』
 そう、自己紹介された。年を得た男性特有のしわがれた声に似た、電子音声だ。
 名前も表示されている。
 
 だが、映るのは大型SUVと同じくらいの大きさの、銀色の何か。
 横に人間を示すシルエットがあるからサイズは分かる。
 角ばった岩のようだ。
 一瞬あとに、その角ばりが左右対称なのに気づいた。
 そして、4つのタイヤで支えられていることにも。
 確かに車。マイルド・スローンだ。

 となりのウインドウに、少しばかり突起の少ない、しかし同じくらいの大きさの白い物が映っている。
『わたくしはジャニアル・アイ。未来あるチェルピェーニェ共和国連邦のエリートたちをお運びできて、夫と共に光栄に思います』
 マイルド・スローンの妻らしい、ふくよかな声。二人共嘲りなどはない、柔らかな話し方だ。
 彼女の姿は大まかに言えば四角い。そして角から、1本ずつ支柱がのびている。
 支柱の先にあるのは、ヘリコプターのようなローターだ。
 後2つのローターが回転を止める。
 3枚羽のローターは折りたたまれると、タイヤに変わる。
 支柱は足のようにまがり、タイヤの位置を整えると体内に収納された。
 後輪が車体を安定させると、前のローターが同じようにタイヤに変形する。
 周囲への影響を最小限にした、上品な動きだ。

『2人には、今動かせる士官候補生を運んでもらっている。あと20分ほどで到着するだろう』
 オルバイファスの声にも、嘲りはなかった。

 ウインドウが追加される。
 現れた映像は、兵員輸送車の中のようだ。
 そこには若者達が向かい合わせで座っている。
『この3人に来てもらう』
 オルバの説明に、1号が頭を下げる。
「すいません。不調法なもので」
 2号は質問する。
「あの、3人だけですか? 」
『ああ。他の連中はすべて入院中だ』
 それを聞いて1号と2号は、言葉を失ったように立ち尽くした。

『……エピコスくん? 』
 新たな映像の1人目は赤い目を持つ少女。
「ジャマルさん? 」
 シエロと呼び合ったのは、サフラ・ジャマル。
 その片方は真新しい眼帯で覆われている。
 短く刈り込んだ金色の髪に、黒いワークキャップをのせている。キャップには白い刺繍で、広がる2枚の翼が。
 そして黒いスーツとスラックスを着ていた。
 空軍士官学校からの増援だ。
 それほど背は高くなく、達美と同じくらいだ。
 だが努力によって体力は増し、立派な体格になっている。
 その彼女が、がっくりとうなだれた。
『あなた達も、我が星の敗北を見せしめられるのね』
 心臓を握りつぶされるような衝撃。シエロはそれを感じた。

『誤解するな』
 それを否定したのは、オルバイファスだ。
『我々は君たちを高く評価している。そして、我々生徒会を召喚した者達は、君たちチェ連人の大多数から姿をくらました、極秘チームであることもはっきりしている。
 カーリタース。君はなかなかできないことをしているぞ。
 我々が君たちに与える物は、今後のチェ連を率いるのに必要な情報。
 それを生で得るチャンスだ』
 チェ連人の目が丸くなった。彼らが持つイメージからは、想像もつかない言葉だからだ。

「あの、ジャマルさんたち。もしかして、テレパシーで外の様子を教えられたの? 」
 カーリが訪ねた。
『ええ。城戸 智慧から。あまりのショックで熱をだして寝込んでいる人もいるわ』

 シエロとおなじ、緑一色の戦闘服と防寒用の牛革ベスト、陸軍の制服を着た者もいた。
『シエロ。無事だったか』
 ひょろりと背の高い男は、ワシリー・ウラジミール。
「それはこっちのセリフだ」
 シエロは知っていた。
 彼が自分の直前に、レイドリフト・ドラゴンメイド、レイドリフト2号、ボルケーナ分身体と戦った事を。
 左腕は肩からつられている。ドラゴンメイドに投げられた際、脱臼していた。
 
 3人目が着ているのは、マリンブルーのセーラー服とスラックス。
 彼の事は、シエロもカーリもよく知らなかった。
(たしか名前は……)
 ウルジン・パンダエヴァ。
 帽子は上の方が膨らんだマリンキャップ。
 海軍の士官候補生だ。
 肌は黒く、全身が太くてたくましかった。
 首など太すぎて、肩と一体化している。
 顔もボールのように丸。
 その口は真一文字に結ばれ、不機嫌そうに横目で睨んでいる。
 右手は包帯で覆われていた。

『うわああああ! 』
 突如電波越しに、耳をつんざくような声。
 叫んだのはウルジン。あの海軍候補生だ。
『お前達! 何やっているんだぁ!! 』
 彼が勢いよく指さした。
 そこでは相変わらず達美がワイバーンの膝で甘えている。
 気づけば、ワイバーンのマスクとゴーグルが外れていた。
 今の彼は、ただの鷲矢 武志だ。
 そして二人の口からは、銀色のラインが……。
 熱い口づけの証拠。唾液。
 一瞬、誰もが目を離せなかった。
 離すには、その時の全身全霊が必要になった。

 代表として、カーリの心を見せてもらおう。
(晴れがましすぎて体から火がでそう! )
 それほど2人は美しかった。その絆は前提であり、たちがたい物なのだ。
 カーリは、過去に同じものを見た覚えがあった。
 幼い日の夜、手洗いに起きたさい、両親がしていた。
 あの時は、気づかれぬように部屋へ入るのに精いっぱいだった。
 カーリは、何とか目を離した。
 シエロは、目が離せなかった。
 1号と2号は、うらやましそうに見ている。だが、アウグルの手で目を塞がれた。
 オウルロードは、そのハードウエアであるランナフォンを風呂敷に包まれ、アウグルに背負われていた。

 呆れた。うらやましい。