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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 1話~5話

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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (1)
 清子の座りだこ

 着物が良く似合う。
いまどき、足に座りだこのあるおさげ髪の少女。
それが清子という女の子だ。

 正座を繰り返すと、足の同じ場所の皮膚が硬くなり、座りダコができる。
15歳になったばかりの女の子は、まず、深く鼻で呼吸する。
それからおもむろに背筋を伸ばす。
綺麗に畳に座る。その姿勢から行儀と芸妓見習いの修行がはじまる。

 時代は、1970年代の半ば。
この頃はまだ、行儀作法という言葉が世の中に残っていた。

 湯西川温泉の春は遅い。4月の声をきいて、ようやく
山陰の雪が溶けはじめる。
雪解けとともに、桜の花が咲く。
この頃から、お端折りと、肩上げの有る結城紬を着た女の子が、
湯西川の街中を走り回るようになった。
おさげを揺らした清子が、赤い鼻緒の下駄をカラコロと鳴らして、
旅館街の路地裏を駆け回っていく。