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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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モデルファミリーになれない人

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その夜、モデルハウスには5人が集まった。

「この歳でおままごとなんて恥ずかしいですね」

「おままごとじゃありませんよ。モデルファミリーです」

「それじゃあ始めましょうか」

それぞれ、妻・夫・子供などの役割を決めて
不法侵入したモデルハウスの中で役割を演じていく。

子供のころにまねしたおままごとではなく、
本物の家族の空気感がそこに再現されている。

「……うーーん、こうして生活してみると
 ここにある窓の場所が気に入りませんね」

「キッチンは2人入ると少し手狭だわ」

「生活してみないと気付かない部分ってあるんですね」

私はモデルファミリーが終わってからみんなと話し合った。

「それじゃあ、また次のモデルハウスでお会いしましょう」

リーダーの男の号令でみんな家に帰った。
もっとも、モデルファミリーをしていたので
どちらが家と言えるのかは不思議な感覚だった。


モデルファミリー2日目。

夜、また別のモデルハウスに集まった。
今度はマンションの1室だった。

「あれ? 山崎さんは?」

「もう30分も経っているのに……どうしたんでしょう」

「ま、まさか私たちのことを警察に!?」

「それは……どうでしょう、警察も相手にしますかね」

モデルハウスに入って、モデルファミリーをしている私たち。
はためには奇妙な行動に見えても、理にはかなった行動。

横断歩道をフライングした人を、その場で通報するような人はいない。
そんな小さなことくらい、たいてい流されてしまう。
それよりも私は早くやりたい。

「まぁ、今日は家出した娘が帰ってこないシチュエーションで
 モデルファミリーをやりましょう」

「佐藤さん、それ素晴らしいです!」

その夜はみんなで険悪な家族会議を行った。
不思議なもので、シリアスなことをするほど終わった後は明るくなった。

「こういうのもいいですね、またやりましょう」

こうして、その日も解散した。


モデルファミリー3日目。

また、参加者が1人減っていった。

「また減りましたね……」

「まぁ、別の場所でもモデルファミリーを行っている班はいますから」

4日目、5日目と日を経るごとにだんだんと参加者は減っていった。
気が付けば最後の2人になっていた。

「佐藤さん、今日は熟年夫婦ありがとうございました」

「いえ、私も好きでやってますし」

「佐藤さんはどうしてこれに参加しているんですか?」

「え? そんなのみなさんと同じですよ。
 みんなで家族になるのが楽しいからです」

「そうですよね」

次のモデルファミリーはもう開催されなくなった。
一応、モデルハウスにひとりで出かけたりもしたが
他の班と偶然遭遇することもなく、
がらんとしたモデルハウスにひとりたどり着いただけだった。

「はぁ……」

こういうのが一番さびしい。
家に帰ってもひとり。
外に出かけてもひとり。

恋人は重いし、家族は辛くなる。
友達はめんどくさい。

「私にはモデルファミリーが一番あっていたのになぁ……」

心にぽっかり穴が空いたような気持ちで歩いていると、
ふと目の前に以前にファミリーをした2人がいた。

「あ! 山崎さん! 早苗ちゃん! 久しぶり!」

「あ、ああ、えっと、佐藤さん?」

「2人一緒なんですね。あれから連絡とれなくって。
 モデルファミリーの情報ってきてますか?」

「いえ、僕らはもう必要ないから」

「そうですか……」

飽きてしまったのだろう。
前はあんなに楽しそうにやっていたのに。

まるで家族が上京してしまったような、そんな切ない気持ちになった。

メールが届いたのはそれから数日後。


>モデルファミリー 開催のおしらせ


「きた!!」

懐かしい文面に心がおどった。
どんな役でもこなせるように、服も選んで髪も整える。

身支度を整えて、深夜のモデルハウスへと向かった。
待っていたのは司会の1人だけだった。

「あれ? ほかの人は?」

「僕だけですよ。また夫婦形式でいきましょうか」

「そうですね」

2回目で慣れたものもあるので、空気感はぴったり。
息苦しくもなく、ごく自然体の夫婦ができた。

モデルファミリーが終わってから司会の男に聞いてみた。

「最近、なかなか開催がされなかったですけど
 なにか理由でもあったんですか?」

「ああ、単に人が集まらなかっただけです」

「こんなに楽しいのに……」

「みなさん、モデルファミリーで家を試しているのもありますが
 同時に家族として過ごせるかも試していたんですよ」

「生活してみて気付くことってありますしね」

「こないだの山崎さんと、早苗さん覚えてますか?
 あの2人、結婚して本当の夫婦になったそうですよ」

「え! そうだったんですね!」

「モデルファミリーはそういう目当てで来る人多いですから」

その夜は久しぶりの再会もあって、司会の人と長く話した。
すごく楽しかったので、私は何度もお礼を言った。

その別れ際。

「今日は本当にありがとうございました。
 すごく楽しくて暖かったです、また誘ってください!」

「いえ、これで最後です。
 やっぱりお互いが家族になりたいと思わないと
 家族になれないことがわかりましたから」

司会の男はさびしそうに去っていった。
私にはよく意味がわからなかった。