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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「歴女先生教えて~」 第二十話

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「本気じゃなかったのだと思います」

「加藤くん、本気じゃなかったってどういう意味かしら?」

「はい、関東の武者たちは苦しい思いをしてきました。頼朝のもとに集まって勝つか負けるかわからないような戦いを起こそうと思ったのは、自分たちの未来を頼朝に賭けたのだと思います。その執念というか、信念というか、そこが安穏として暮らしていた平家との違いだと思います」

「鋭い視点ね、素晴らしいわ」

ちょっと高木は加藤の答えに嫉妬した。美穂の機嫌をとるためにあいつは勉強しているんじゃないのかと思えたのだ。

「教科書に書いてあることは後で読んで覚えて頂戴。今日は頼朝が何故決起したのかと言う事と、決起できたのか、ということを学んで欲しいの。父親の義朝が知多半島の野間というところで平家に恩賞目当てで寝返った地元豪族長田忠致(おさだただむね)に1160年(平治二年)正月に風呂場で殺されたの。38歳だった。13歳で捉えられた息子の頼朝は平清盛の継母である池の禅尼(いけのぜんに)に助命を懇願されて伊豆に配流となった。もう一人の義経は義朝の側室常盤御前が清盛に身体を投げ出して助命嘆願して許された」

「先生、男というのは女性の頼みに弱いんですね~昔も今も」

高木のこの一言で爆笑になった。

「高木くん、それは言えてるわ~ハハハ」

「あれ?先生もそうなんですか?誰かに無理を頼んだのかな?」

「それはそのまま君に返すわ」

またしてもしてやられた形の高木に加藤は一人大笑いしていた。

「頼朝は伊豆で貧しい暮らしをして育ってゆくうちに、武士と言うものの本質を悟ったの。彼自身は源氏の嫡流で育てられたから苦労知らずだったの。北条政子という豪族の娘と結婚してそれなりに平和にそして安穏と暮らしていたんだけど、平治の乱が終わって平家の益々の横暴を許せないと立ち上がった源頼政と以仁王(もちひとおう)からの誘いを一度は断ったの。怒った清盛に二人は殺され、怒りが収まらない清盛は諸国の源氏を皆殺しにすべきと家臣たちに命令を出すの。
さすがにこれには頼朝も我慢が出来ずに発起したのね。もちろんバックに居た北条時政に後押しされたとは思うけど」

「先生、頼朝は自分の平和な生活を捨てて、源氏のために立ち上がったというのですね?」

「渡辺くん、そうね。そしてそこには全国の源氏一族の、また関東の豪族たちの不満をまとめる一大決心を固めるに至った指針があったの。それはこの戦いに勝ったあかつきには、平家の所領をみんなに分け与えて、それを永久に所有できるようにするという、いわば武士の、農民武士の、悲願を叶える約束があったのよ」

「土地所有権は墾田永世私財法で約束されていたのではないのですか?」

「それは天皇家、藤原家や寺院、大きな豪族だけの特権になっていたの。地方の武士たちには荘園の開墾を手伝うという形式でしか収入は確保されていなかったのよ。平家は破れ鎌倉幕府になった時に、頼朝が行った改革で全国に地頭と守護を置いたわよね。特に地頭というのは土地の支配者になるということだから、ここに武士の念願は叶ったの」

「先生何故頼朝は鎌倉幕府を長く続けることが出来なかったのでしょう?確か三代で北条家にとって代わられていますよね?」

「この話は長くなるから、夏休み明けにしましょう。一つ言っておくと、源実朝(みなもとのさねとも=第三代将軍で頼朝の四男)が殺されて北条義時(よしとき=政子の弟)が天皇家から鎌倉幕府としての将軍を形式的に臣籍降下して迎え入れ、彼にとって代わって政治を代行する執権制度を始めたの。これが長く続く北条執権時代よ。有名な蒙古襲来の時も北条執権四代目時宗の時代だった」

ここで終業のチャイムが鳴った。