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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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既読死

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友達が死んだのは昨日。
死んだ日もスマホを手放さなかったらしい。

「あの子、昨日までRineで話してたのに……」
「ぜんぜん自殺するような子じゃなかったよね」
「あれじゃない。最近噂の死の既読スルー……」

女子の噂は早い。学内でも人の死を悼むより
新しいビッグニュースを話し合うことがなされていた。

「そんな子じゃないもん……」

私は友達の家に行った。
保護者は顔見知りの私をすんなり通してくれる。
友達の部屋はいつも通りで、トイレでも行ってるみたい。

「あ、スマホ。回収されてなかったんだ」

友達はとにかくスマホを手放さなかった。
話している時も、授業中も、はてはお風呂にも。

何か遺言が残っていないか気になって電源をつけると、
ちょうどRineのメッセージ作成画面のままだった。


[既読]
あ******た

「あっ既読ついてる」

既読ッセージは部分的に文字化けしている。

翌日、友達の紗枝に相談してみた。

「あのメッセージなんだったんだろ」

「あんた知らないの? 既読死の噂」

「なにそれ」

「Rineのメッセージを受け取って1日以内に返信しないと、
 死んじゃうってメッセージがあるの」

「呪いのビデオの現代版じゃないんだから」

半信半疑だった私も、テレビでこのことが報道されると
さすがに信じざるをえなくなった。

『最近、若い人の間で呪いの既読が噂になっています。
 関係会社は関与を一切否定し、悪い噂だと結論付けています』

「怖いわねぇ、スマホに人生を左右されるなんて。
 道具に振り回されるなんて嫌だわ」

母はテレビの電源を消した。
翌日に母は私が家に帰ると死んでいた。

電源が付いたままのスマホには未読メッセージが届いていた。
私が確認すると既読マークがつく。


[既読]
あ******た


「またこれ……」

だんだん怖くなってきた。
ダメ押しに私のスマホにも同じメッセージが届く。

宛先は……文字化けしてわからない。


[既読]
あ******た


「うそ……!」

友達の言葉を思い出す。
"1時間以内に返信しないと死ぬ"

母も友達も返信していなかった。
私は慌てて返信した。


[既読]
あ******た

  既読 わかりません>

返信として正しいのかはわからないけど、ルールは守った。
そこから1時間は頭がおかしくなるほど怖かった。
無事に朝を迎えられて安心した。

「よかったぁ……、大丈夫だったんだ」

ふたたび着信音。


[既読]
あ**が***た


「まだ終わらないの!?」

 既読 助けてください>

すぐに返信する。
そこから数時間後にまたメッセージ。

だんだんと頻度が増えてきてる。
まるで死神が近づいてくるみたいに。


[既読]
あ**が*つ*た


「だんだん文字化けが治ってる……?
 これ全部文字を表示させたら終わるかも……」

 既読 知らないです>

残り4回、ちゃんと返信すればきっと内容がわかるはず。
そうすれば解放される。

私はどんな時もメッセージに気付けるようにスマホを離さなかった。
メッセージのスパンはランダムで、いつ送られるかわからない。


[既読]
あ**がうつ*た

 既読 お願いします>


「残り3回……」

授業中もけして手放さない。命がかかってる。
バッテリー残量に気付いたのは、下校中でだった。

「もう! なんでこんなときにバッテリーが!」

タイミングが悪く電池切れ。
近くのコンビニに走りながら、片手でスマホを起動する。

電源切れたといっても、再度つければ数秒操作できる。
すぐに返信してしまえばとりあえずは大丈夫。

同時にコンビニでバッテリーを買いに向かう。
焦る気持ちが視野を狭くしていた。


危ない!


誰かが言ったその言葉が耳に入るころには、
私の体は車にはね飛ばされて宙に舞っていた。





「目が覚めましたか?」

「……病院?」

「歩きスマホどころか、走りながらスマホを操作するなんて
 正直、車にひかれて当然ですよ。気を付けてくださいね」

看護師は開口一番で私の不注意を叱った。
それより問題は……。

「あの! 今何時ですか!」

「18時ですけど」

「まだ大丈夫! 19時がリミットだから……」

私が慌ててスマホを探すと看護師はあきれ果てた。

「3日も寝込んでいて目を覚ましたらすぐスマホですか?」

「3日!?」

「それにあなたのスマホも事故の時に壊れましたよ。
 データなんて残ってないですから」

「そんな……」

でも待って。
私が3日もこうして生きてるってことは、助かったってこと?
返信期限は過ぎたに決まっている。

「律儀に返信しなくても、データを消せばよかったんだ……」

どうして気付かなかったんだろう。
呪いだの期限だので余裕がなくなりすぎていた。

退院すると新しいスマホを買いにショップへ行った。

「新しくスマホを買い替えですか?」

「はい。前のが壊れてしまって」

「それでしたら連絡先を移すことができますよ」

破損したスマホを手渡して、データを移動することに。
呪いのメッセージが移植されるのは怖いけど、
さすがに今からまたやり直すことはないだろう。

数日後、新しいスマホに前の連絡先が移植された。

「はい、これでお友達とも連絡できますよ。
 一部、データ側の破損もあったので修復しておきました」

「データの破損?」

「文字化けするようになってましたから、治しておきました」

Rineの履歴を探す。
見つけたのはあのやり取り。

メッセージを読むと
呪いのメッセージの文字化けはすべて外れていた。



[既読]
あなたがうつした

  既読 わかりません>

[既読]
あなたがうつした

 既読 助けてください>

[既読]
あなたがうつした

 既読 知らないです>

[既読]
あなたがうつした

 既読 お願いします>


これ以降のメッセージはなかった。

「これじゃまるで私が……呪いを広めるのを許可したみたいじゃ……」

他のメッセージを開くと、
友達の紗枝に1件だけ私から送信していた。


あなたがうつした

 既読 なに?文字化けしてるんだけど>


沙耶の画面には私が送ったメッセージが文字化けしていた。
作品名:既読死 作家名:かなりえずき