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同調率99%の少女(11) - 鎮守府Aの物語

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--- 1 艦娘部と生徒会



 川内と神通の着任式は、次の週の土曜日に行うことになった。幸が同調の試験に合格した日からだいぶ空くが、提督の都合、五月雨たちの都合、そして那美恵たちや顧問の阿賀奈の都合上仕方なくの日取りとなった。
 それまでの間に流留と幸には川内と神通の制服が届く手はずになっているため、それを試着するために鎮守府に寄る必要がある。

 前の週が開けて2日ほど経った日、那美恵たち3人は阿賀奈から呼び出された。艦娘部としての部室は彼女らの高校には存在しないため3人は一旦生徒会室の前で集まり、それから職員室へと向かう。
 コンコンと職員室の扉をノックし、那美恵は一言断ってから入る。阿賀奈は自席から手を振って那美恵たちに合図を送っていた。
「先生、何かあったんですか?」
 3人は阿賀奈に近寄り、那美恵が開口一番質問した。すると阿賀奈はニッコリと笑って答える。
「提督さんから連絡あってね、川内と神通の制服ができたんだって!内田さん、神先さん。二人の艦娘の制服よ。楽しみよね〜。」
「えっ!?あたしたちのですか!!?」
「でね、時間のあるときに試着しに来てだって!」

 流留は素直に声を上げて喜ぶ。幸も声こそ上げないが、顔をあげて息を飲む動作をしたため、那美恵はひと目で気づいた。
 制服の試着と聞き流留はワクワク心踊り始めた。ついに漫画やアニメのようなヒロインになれる自分が目前に迫ってきていると、気持ちが高ぶって仕方がない。
「うわぁ!うわぁ!すっごーく楽しみ!ねぇなみえさん。今日帰りに鎮守府寄りましょうよ?」
「先生もみんなの艦娘の制服姿、生で見てみたいなぁ〜。」
「じゃあ先生も一緒に!」
 流留は興奮の勢いそのままに阿賀奈を誘うが、阿賀奈はクビを横に振った。
「ざんねーん。先生すぐには帰れないのよぅ……。」
 その直後、流留の隣にいた那美恵からも断りの言葉が発せられた。
「流留ちゃん、あたしも今日は生徒会の用事で行けないんだ。明日なら大丈夫だから、明日行こ?さっちゃんもいい?」

 幸はコクリと無言で頷く。流留は待ちきれないという様子を全身(主に拳で)で表しながらも、我慢することを伝えた。
「はい……わかりましたよ。明日っていうことで。」
「明日かぁ。明日なら先生も早く出られるかなぁ〜無理かなぁ〜」
 阿賀奈は自分のスケジュール帳を開いて予定を確認しつつ呟いている。
「先生、試着の日もいいですけど着任式の日、忘れずに鎮守府に来てくださいね?」
「わかってますって光主さん。先生ちゃーんと覚えてるんだから、ね!」
 結局その日は那美恵たちは誰も鎮守府に足を運ばず、知らせを聞くだけにとどめておいた。


--

 翌日の放課後、那美恵たちは一旦生徒会室に集まり、それから鎮守府へと行くことにした。川内と神通の制服の話を那美恵は三千花らに話していたので、三千花たちは流留たちの着任の準備が順調に進んでいることを自分たちの事のように喜んだ。
 特に三戸は流留、和子は幸に対して喜びを伝える。

「いや〜内田さん。よかったね〜艦娘の制服。」
「うん!今から楽しみ!」
「俺も見に行きて〜な〜内田さんのあんな姿こんな姿とかー」
「三戸くん何言ってるのさ〜。あたしの見るくらいならなみえさんやさっちゃんのほうが見て楽しいよきっと。」
 そう言う流留だが、三戸からすれば素の美少女度としては流留がトップだと評価している。もちろん彼は男同士でしかそんなことは話さない。もし女性陣の前でうっかり口を滑らそうものなら那美恵たちからの株を落としそうだし、目の前の少女からすら危ないと直感し自制した。
「いやいや、内田さんはもっと、気づいたほうがいいよ。」
 三戸の言葉を理解できず、?な顔をする流留。自制した結果、このセリフが彼の限界だった。

 一方の和子と幸は流留たちよりも静かに喜んでいる。
「さっちゃんの制服着た姿、私も見たいな。あとで写真で送ってね?」
「……うん。なみえさんに撮ってもらったら送る……ね。」
 コクリと頷いて和子の言うことに承諾する幸。言葉少ないが、唯一の友人の和子への精一杯の歓喜をともなった返しである。

 知り合い同士のやりとり見ている那美恵と三千花。三千花はふと気づいたことを口にした。
「ねぇなみえ。内田さんも神先さんもお互いやなみえのこと名前で呼んでるけど、あれなに?」
「うん。これから艦娘部としてやっていくからさ、もっと仲良くしたいって願いも込めて先輩後輩じゃなくて、名前で呼び合うようにしたの。」
「そっか。なみえらしいといえばなみえらしいなぁ。」
「エヘヘ〜」
 那美恵ははにかんでしばらく流留たちを見た後、三千花に向かって言った。
「身近な知り合いが学生とは違う存在になるってさ、やっぱ不思議に感じるものなのかな?」
「ん?どうしたの?」

「流留ちゃんは三戸くんがきっかけに、さっちゃんはわこちゃんがきっかけに艦娘の世界と出会ったでしょ?自分たちがきっかけで知り合いが知らない世界のヒロインになる。それはとんでもない世界の存在で、危ない目にあうかもしれない。普通に生きる人達からすれば現実味のない、ありえないものと感じるかもしれない。けど艦娘は間違いなく現実のもので、そんな特別なものじゃない、日常の延長線上にある、少し不思議な存在。現実と非現実が混ざるヒロインに、知り合いがなるんだよ? 不思議に思わざるを得ないでしょ、って思ってさ。」
 那美恵が感慨深く思いを打ち明けると三千花は相槌を打った。
「お、なみえ真面目モード?」
「んもう、みっちゃん!あたしだって真面目に語りたい時もあるんだよぉ〜」
「アハハ、ゴメンゴメン。」

 ふぅ、と三千花は一息つく。視線は那美恵から流留たち4人に向けた。
「私だってさ、あんたが艦娘になったって前に聞いた時、内心飛び上がりそうなくらい驚いたんだよ。それになんで友人の私になんの相談もなくやりはじめたんだって。話には聞いてた艦娘になみえがなるって、確かに現実味なかったけど、あのとき私達を見学に連れてってくれたでしょ。」
「うん。」
「それで私達は艦娘が本当に今あるものなんだって、理解することができたよ。それと同時に、誇らしいって思ったわ。」
「誇らしい?あたしを?」
「えぇ。そりゃあ不思議にも思ったけど、私はそれよりもなみえを誇らしく思ったよ。あんたの言葉を借りるなら、現実と非現実が混ざるヒロインに、なみえがなる。校長を説得したときのやりとりじゃないけどさ、数年後、数十年後、私の知り合いは世界を救ったヒロインなんだって言えたら、すごくない?私は誇りに思うよ。私はなみえの功績を語り継ぎたい。これまであんたを手伝ってきて、私はそう本当に思えるようになったわ。」
「みっちゃん……へへっ、なんか嬉しいやらむず痒いやら。今まで色々ありがとね。そしてこれからもよろしくね?」
「うん。なみえたちは思う存分艦娘の仕事やってね。校内のことや学校と鎮守府の間のことは任せてくださいな、生徒会長。」
 三千花が笑顔とややさみしげな表情がない混ぜになった表情でわざとらしく会釈をして那美恵を鼓舞した。それに対し那美恵はともすれば不謹慎ど真ん中の冗談を交えて明るく返す。