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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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トランスフォームするおともだち

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久しぶりに友達と会った。
元気そうな顔をしているが少し顔に違和感がある。

「よお、久しぶり」

「あのどちら様?」

「え? あ、ああ、そうか。トランスフォームしてなかった」

俺は体の皮を裏返し関節をバキバキと音をならして変形する。
あっという間に通常の体になる。

「ああ、佐藤か。変形してたからわからなかった」

「仕事では変形している方が客がつかめるんだよ」

すべての人間は変形できる。そんなのは当たり前だ。
みんな表の体と裏の体を持っている。

「でも、こうして飲むのも久しぶりだな」

「実は佐藤に話したい笑い話があるんだよ。
 お前の冷徹な鉄仮面の嫁さんも笑っちゃうネタさ」

「美人の妻をもらったことをひがんでんじゃねぇ」

すると、友達は目の前で変形をはじめた。
裏の体になった友達は平然と酒を飲む。

「どう?」
「どうって……」

「普通だろ」
「まあな」

そもそも変形してもイケメンになるわけではない。
どこにでもいる人間が、どこにでもいる別の人間になるだけ。

「変形ってそういうものだろ?」

「いや違う!」

友達は急に熱を上げて話し始めた。

「オレは考えたんだ、どうすればモテるかって。
 でも変形しようがしまいが結局はモテなかった!」

「そんなもんだろ」

「でも、パーツ単位で変形できれば違うと思ったんだ。
 俗にいうイケメンなんてパーツの配置が整っているだけなんだ」

「パーツ単位の変形なんてできるのか?」

俺たち人間が行う変形は完全に内側から裏返る。全とっかえだ。
そんな器用な変形なんてしたためしがない。

「それができたんだ」

「え!」

「これが変形した写真」

友達はスマホに取った画像を差し出した。
パーツには見覚えのあるものがある。たしかに友達本人だ。

「すごい……! 信じられないくらいイケメンだ……」

「だろ。変形後の顔でいい部分は変形して、
 元の顔の方がいい部分は残していったんだ」

「器用なことするもんだな」

「もちろん普通じゃできない。特別な手術をしたんだ。
 そのかいはあったぞ。めっちゃモテたからな一生ぶん」

写真から友達の顔に目を戻す。
今の顔はイケメンどころか俺の知っている元の顔だ。

「……それじゃ、どうして治したんだ?
 モテまくりだったらずっとそのままにすればよかったじゃないか」

「それが実はオチがあってな……」

友達にオチを聞くと俺は笑った。
家に帰っても思い出して笑いそうになる。

「あなた、どうしたの。ニヤニヤして」

妻がいつもと同じ表情で立っている。
出会ってから一度も笑顔を見せたことがない美人妻。
せっかくなので話してみようと思った。

「実は今日、友達と久しぶりに会って話したんだ。
 そいつの失敗談が面白くってさ」


俺は友達の話を妻に話していった。
オチが気になるのか妻も真剣そうなあいづちをうつ。

「で、そいつどうなったと思う?」

「どうなったの? どうしてイケメン顔を辞めたの?」

「実は部分変形すると、笑ったりしたときに顔が歪むんだ。
 顔の右半分と左半分がちがうとかな。
 部分変形してるから表情変化すると、元の顔以上に醜くなるんだってさ!
 あはははは」

俺は話して爆笑した。
釣られて妻もおおいに笑った。




妻の笑顔が左右めちゃくちゃになっているのを見て
俺は一気に笑顔がひいた。