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BOOK~白紙の魔道書~ 第一話「新年度1」

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書歴三百八十年四月

新入生や進級した生徒でごった返す学園都市エルティウスのリーズヴェル学園の大広場。

そこは、新入生歓迎のイベントや、様々な部活の新部員の勧誘など、それこそ十人十色の活動をしている。

そんな、毎年行われる風景の中に一人大広場の中央、噴水の縁に腰掛け誰かを待つ男子生徒が一人いた。

紺色の髪に銀色の瞳、着ている制服は着崩されている。

(遅い……)

その男子生徒は誰か待っているようで、ただひたすらに暇そうにしていた。

待ち人を待つ間数回部活の勧誘を受けたりしていれば、ほどなくその待ち人が来たようだ。

それは一人の女子生徒、赤茶の髪に灰色の瞳、制服はきちんと来ていて、男子生徒とは真逆の様子だ。

「遅かったねカノン……まったく、最近のお嬢様というのは時間を守ることをしないのかな?」

男子生徒は女子生徒カノンに嫌味を交えた挨拶をする。

「あら?待ち合わせはまだのはずでしょ?それに私はハルトのライバルよ…少し位嫌がらせしてもいいでしょ?」

そう悪意を含んだ笑顔で言うカノン、ハルトと呼ばれた男子生徒は深いため息をつき、やれやれと言いながら立ち上がった。

「今日やることわかってるよな?」

「ええ…各部活が違法な勧誘をしていないかの視察ね……さあ行きましょうか……」

カノンとハルト二人はこの学園の生徒会の一員、学園の秩序を守り、生徒たちが快適に学園生活を送るための組織。

けれど、その反面反発してくる、生徒も多い、そのため……。

「死ね!!生徒会の犬め!!」

守るはずの生徒が襲って来るという事態もよくあるのだ、そのため生徒会のメンバーはこの学園の序列、ランカーたちがなっている、一部例外を除いて。

もちろん、ランカーである彼が普通のただ生徒たちに負けることはほとんどなく、襲われては返り討ちにするというパターンがほとんどである。

そんなことを日常的に続けていれば、敵は多くなる、それを繰り返して今の状況を作り上げていた。

それは、二人が中庭をとっていた時のこと、急に数名の生徒に囲まれたのだった。

「生徒会の犬め、死すべし!!」

どうやら、彼らは勧誘を邪魔されまいと、部活を守ろうとする部活員らしい、各々部活にちなんだ武器を持ち、その全ては魔力によって強化されている。

カノンとハルトはため息をひとつ吐き、戦闘姿勢をとるその視線は敵を見つめその立ち位置は互の背中をつけ死角をなくすもの。

「さて、君たちは何分俺たち相手に持つかな?」

「黙れ生徒会の犬め!!今日こそは成敗してくれる!!」

中庭に戦闘開始前の静寂が訪れ、そして、音と共に時が動き出す、初めに動いたのは部活員からだった。

上手く練られた連携…、どうやら彼らはもともとこの場所でこの人数で二人を襲撃するつもりだったようだ。

一人目が牽制で飛びかかり、二人目がその影から攻撃を加える、それが八方向から二人に襲いかかる。

二人は各々の武装を取り出しまず、一人目をいなし、二人目を迎撃する、その攻防を一度だけし、カノンはライフルを斉射しつつ、ハルトはその辺に落ちていた木の棒を一本のレイピアに変換し突っ込む。

ハルトは、的確に敵の動けなくなるポイントだけを穿ち、敵を一人ずつ減らしていく、対するカノンは敵の急所を魔力の弾丸で打ち抜き、敵の数を確実に減らしていく。

戦闘はすぐに終わった、その場に立っているのはたった二人、カノンとハルトだけ、あとの部活員達は意識を失っているのが数名、傷口を押さえもがいているのが数名、残りは痙攣している。

「ふぅ~まったく…たったこれだけの人数で私達を襲おうなんてね」

「おい…カノン……いくらなんでもやりすぎじゃないか?」

カノンが倒した数名をみてハルトが心配そうに呟いた、どうやら魔力でできた弾丸で撃たれた者は外傷はないものの衝撃で内臓が少々やられているようだ。

それを見たハルトは、また生徒会の敵が増えることを懸念したが、どうやらカノンの考え方は違ったようで。

「何言ってるのハルト?ここまでやってしまえば……私たちに歯向かおうと思えないでしょう…」

なんとも恐ろしいことを考えるんだとハルトは思った、それは力による押さえつけだった。

(さすがの嬢王様気質といったところか……でもそれではいけない…)

それは一つの懸念、カノンへの心配事だった、これが生徒会への敵ならまだいい、けれどそれがカノンへの敵へなった時に、カノンはそれ全てを押さえ込めるのだろうか、ハルトはそれを心配していたのだった。

そんな事とは露知らず、カノンは倒した、部活員たちの部活を探る、それはここにいる部活は全員何かしらのやましいことを行う恐れがあるからだ。

それを未然に防ぐのも生徒会の役目だとカノンは語った。

確認できた部活は三つ、剣道部・バスケ部・武道部だ、どれも大会で成績を残している部活、それだけに部員確保に必死と見える。

「さて行くわよ」

「行くってどこに?」

「決まっているでしょう?私達を襲った部員が所属している部活によ」

どうやらカノンは自分達を襲った部活に乗り込み行くというのだ、ハルトはそれを止めようとするも、カノン話しを聞かずにさっさと歩き始めてしまう。

ハルトは再び深い溜息をつき、カノンの後ろについて歩き始めた。

二人の乗り込みはまずバスケ部が標的だった、バスケ部の本拠地は学園の南に位置する体育館、二人はまず体育館にいき、体育館のあたりに遮音の結界を張り、体育館の扉を開いた。

そこには練習中の生徒、それに二人が来たことにすぐに気づいた高学年の生徒が数名。

まず、二人の標的は奥に高学年の生徒たちだった、まず間違えなく今回の襲撃、彼らが関与しているだろう。

「さて、今さっき貴方方の部活の生徒が私達を襲撃したのですが……何かご存知ではないかしら?」

まったく恐ろしいとハルトは思った、ついさっき自分では乗り込むと言わんばかりにいかっていたというに、彼女はそんな素振りを一切見せずに“笑顔”で淑女のように振舞っているのだ。

(……まったくこれだから女は怖い)

「何かいったかしら?ハルト君?」

誰にも聞こえないように言ったはずのハルトの声は、どこからかカノンの耳に届いていた、けれどハルトは一切声を出していない、一体どこから聞こえたのか、それとも心を読んだとでも言うのか。

とにかくハルトは恐怖し、少し震えながらカノンの後ろをカバーしている。

二人がこの体育館に入った時から戦いは始まっていた、まずは心理戦、相手は自分たちが何人できているか把握している、だからあえて乗り込んだ。

そうすることによって、来たのは二人だけれど、いつ援軍が来るかわからないという状態を作り出すための。

これが今回の作戦、今日一日で三つの部活を襲撃するための、つまるところ“短期決戦”こうすることによって、心理的に追い詰められた敵から勝手にこちらを襲ってくると踏んだのだ。

そして、作戦は見事に的中する、高学年の生徒、おそらく部長であろう生徒は体育館の奥から十数名の生徒を呼び出した、彼らは各々武器を持ち、やる気は満々のようだった。