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詩集【紡ぎ詩Ⅲ】 ~恵想花~

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年を重ねて経験値を積んだからといって 寄り道はなくならない
あの想い この想いが交錯して
ふと脚を脇道に向けてしまうこともある
けれど 長い道を歩いてきたからこそ判ることもある
何も手にしていなかった頃のことを思い出せば良い
まだ道を歩き始めたばかりの頃を思い出せば良いのだと
あの頃の自分の想いの何と真っすぐで初々しかったことか
ある意味で 熱き情熱とさえいえた迸るような想いを身のうちに抱えていた、あの頃
何もなくても、ただ情熱さえあれば良いと素直に思えていたあの頃を振り返れば
人生は何度脇道にそれたとしても 
いずれ自分が本来進むべき道に自然に戻れるのだと判ってくる
あの頃の想いはそのまま今も自分の核となっている
核の周囲に「経験」によって培われた様々なものが身についた―ただそれだけ
丸ごとの今の自分を受け入れて
また一本の道を進む
時に立ち止まり青空を眺め 道端の花を眺めながら


☆ひとすじの光~その優しい笑顔でママの心を明るく照らしてくれる娘よ~


人生は川の流れのようなものだと感じることがある
流れ流されて どこにたどり着くのかは誰も知らない
上手くいきそうになりかけた寸前
波に呑まれて危うく沈みそうになったこと
もう駄目だと沈むのを覚悟した瞬間
身体が軽くなって浮き上がり 恐る恐る目を開けたら
美しい景色の見える穏やかな川を悠々と泳いでいたなんてこともある
人生 本当に何があるか判らない

予期せぬ荒波に呑まれそうになった私
ある時 娘の笑顔がふっと浮かんだ
―仕方ないよお、ママ。そうなる運命だったんだから、逆らっても無駄だよう。
おっとりとした自己主張のない次女がいつか言っていた言葉だ
小学生の時 誰もやりたがらなかった学芸会の劇で犬役を当てられた彼女は言った
―誰も他にやらないなら、私がやっても良いよ
その台詞を聞いて この子は強い娘だと思ったものだ
いつも穏やかに笑っているこの子が怒っているのを見たことはないが
その穏やかさは強靱な心に支えられているのかもしれない

今朝 あることで悩み落ち込んでいた私の心に
すうっと次女の言葉が入り込んできた
―仕方ないよお、ママ。そうなる運命だったんだから、逆らっても無駄だよう。
その言葉を思い出したのは偶然だったのか必然だったのか
その瞬間 暗闇の向こうがふっとかすかに明るくなったような気がする
―やるだけやってみたら良いんだよ。
また娘の言葉が聞こえてきたような気がして
ふと耳を澄ます
娘は今朝 念願の修学旅行に出かけていったばかりだ
いつも穏やかに笑っているあの娘のことを思い出したら
なんだか私まで身体の力が抜けて
ふわりと笑ってしまった 


☆「作者はヒロインに恋をする」

 小説を書き続けて随分と年月が経った
 そういうのを「筆歴」というらしいが
 その筆歴とやらだけを見れば、本当に長い
 最近 我ながら一つの道をよくぞここまで歩いてきたものだと
 感慨に耽ることが多くなった
 歳のせいか それとも 自分に甘すぎるのか
 それはさておき
 長い道の最中には色々とありすぎるくらいあった
 派手に転んで 二度と起き上がれないと思ったことは一度ではない
 悔し涙に暮れたことも
 でも その倍の数以上良いこともあった
 書き続けてきて良かったと思ったのは数え切れない
 何が一番嬉しいかといえば
 やはり作品を書き上げたときの爽快感だろう
 これは書いている人にしか判らない
 いや 文芸に限らず一つの道を邁進している人は理解してくれるかもしれない
 たまに書いている最中に「産みの苦しみ」を味わうことはあっても
 作品が仕上がれば 苦しみさえも甘美な想い出に変わる
 自分だけが作る物語世界に浸りきっているときは
 翼をいっぱいに広げて大空を飛翔している気分だといえば
 他人は笑うだろうか
 もちろん 大空から眺めているのは自分だけの作品世界だ
 作品を書き上げてラストの一行を書き込んで「了」と入れた瞬間
 涙が出るほど じーんとする気持ちと
 やるべきことをやり遂げた後のスカーッとした爽快感が同時に押し寄せる
 
 考えてみれば
 色々な作品を書き 様々なヒロインと出逢った
 歴代ヒロインはどこかに自分を投影させたときもあるし
 まったく真逆の―むしろ ああなりたい こうであって欲しいと
 憧れや理想像をヒロインに託すことが多かった
 小説を書きながら常に考えるのは
 ―人とはなんぞや
 或いは 人は何のために生きるのだろうか
 という問いかけだった
 普段は考えもしないことを作品を通して考える
 書く楽しさの他に 
 人や人生というものについて深く考えるきっかけを貰えた
 自分自身の人生で哀しいこと辛いことがあった時
 自分が作り上げたヒロインに励まされ教えられたことも結構ある
 少なくともヒロインに恥じない自分でありたい
 そういう生き方をしたいと
 「彼女」のことを思い出して背筋をしゃんと伸ばしたこともあった
 言うほどたいした作品ではない
 駄作ばかり書き散らしてきたけれど
 自分の作り上げてきたヒロインや物語に愛着を持っている
 ヒロインたちには自分の好きな花の姿を重ねてきた
 私の心の中にいるたくさんのヒロインたちに恥じないような生き方ができれば―
 それが今のささやかな願いだ    


☆「色・花、そのハーモニー」

今年も花の色が変わり始めた
紫陽花が咲く大好きな季節
よく見ると
小さな星形の花一つ一つの色が違う
濃く色づいたものもあれば 
淡いままの色もある
少しずつの濃淡がおびただしく重なり合って
大きな一つの花を作っている
自然のなせる偉大な調和(ハーモニー)
皆 同じようでも少しずつ違って個性がある
一つ一つの存在は小さくても 集まれば大きな花を咲かせることもできる

色々なことを教えてくれる花だ
日々 少しずつ色を変え様をうつろわせてゆくこの花のように
私も少しずつ前向きに変われたなら
花が色づき始めたことに気づいて
ふと そんなことを考えた五月最後の朝―

☆「生きて死ぬということ~物想いの初夏~」

今年もまた夏が来た
今より若い頃には秋が好きだった
秋生まれというのもあるが やはり静かな落ち着いた雰囲気が良い
しかし 一定の歳を経てからは秋より春が好きになった
すべての生命が萌え出ずる「始まり」の季節こそ素晴らしい
若い頃はともかく 歳を取ってくると
秋のもの悲しさは寂しすぎると思うようになったからだ

そして いつものようにまた夏が来る
昨日 外に出た刹那 頭の上を鋭いうなりを上げて蜂が飛んでいった
うわっと声を上げて走って逃げようとしたら
今度は地面を這っているは虫類が目に飛び込んでくる
おわっとまた声を上げて逃げた
蜂は嫌いというよりは怖い
は虫類は怖いというよりは嫌い
恐慌状態に陥りそうになった私だが
ふっと落ち着いて地面を見た
は虫類は死んでいた

俗に言うヤモリの赤ちゃんだろうか
まだ 本当に小さかった
その瞬間 ふっと何ともいえない気持ちがこみ上げてきた
生きたかっただろうに
せっかく卵がふ化して この世に生まれてきたのに