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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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俺1号 俺2号 俺V3

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事故現場に到着すると、見るも無残な山田太郎がいた。

「こんなに顔がぐっちゃぐちゃだと助からないわね……」
「宝くじをガン見しながら死んだみたいよ」
「車が突っ込んできたなんて気の毒……」

野次馬はやいやい言っているが、
いましがた死んだ山田太郎と俺がまったく同じ顔だとは気付いていない。

山田太郎2号。それが俺。

「さて、ここから忙しくなるな」

人間は生まれたときにスペアを用意される。
オリジナルが1号。そして、2号、V3と合計3人。

オリジナルが不慮の事故などで無くなっても
社会機能を停止させないために存在している。

山田太郎(故)の家につくと、
記憶にはあるけどホテルの一室のようなよそよそしさを感じる。

「まずは、友達にも変わったとばれないようにして
 仕事もオリジナルと同じようにこなさなくっちゃ」

記憶が引き継がれているとはいえ、
個々人の癖までは完全に引き継がれているわけではない。
しっかり勉強しなくては。

翌日、何食わぬ顔で出勤する。

「山田、昨日のニュース観た?」

「ニュース?」

「3号線で人が死んだらしい。しかもお前と同姓同名!」

「マジかよ。俺死んだのか」

「あはははは、今日はやけにノリいいじゃん!」

しまった。
オリジナルはクールに流す感じが正解だったのか。

とはいえ、同僚にも気づかれていない。
まさか昨日死んだ男がオリジナルだと思わないだろう。

引き継がれている記憶をもとに、
周りに疑われないように自分で自分に成りすましていく。


「山田君、今日はやけに仕事早いね」
「山田さん、なんだか変わりましたね」
「山田ァ、お前すっげー真面目になったじゃん」


が、それでもオリジナルとの溝は深まっていく。

「なぜだ……なにが足りない!」

家に帰ると頭を抱えてしまった。

記憶は引き継いでいる。間違いはないはずだ。
なのにどうしてこうもオリジナルと差がついてしまう。

うんうんうなっていると、携帯にメッセージが届いた。


『今日の山田くん、とってもかっこよかったです。
 また一緒に食事でもどうですか?』


「たしかこれは……いい感じになっている、受付の子だ」

まさか向こうから誘ってくれるなんて。
前の記憶では誘って断られることはあったが、逆はない。

「俺は……これでいいのか?」

ムリにオリジナルに寄せる必要なんてないのか。
いくら同じ人間だとはいえ、別人として生きたほうがいいんだ!

翌日から俺は無理に記憶に沿わせることをしなくなった。
俺が俺らしく生きたほうがずっと充実した。

オリジナルではなしえなかった彼女もできたし、
仕事も順調、プライベートも充実してなんの不満もなかった。


だから、宝くじの存在なんてすっかり忘れていた。


「あ、当たってる……!!!」

ふと、見つけた宝くじ。
何度も数字を確かめたがどう見ても1等だ。

有効期限が切れているとかそういうオチもない。

「そ、そうか……!!
 オリジナルが宝くじをガン見してたのって、
 当たったのが信じられなかったんだ!」

1号の記憶は2号、3号にもリアルタイムで引き継がれる。
でも、そのときどんな気持ちだったのかまではわからない。

だから、当たっているなんて気にも留めていなかった。
気に留められない記憶なんて、ないのと同じ。

「気付いてよかった、これで億万長者だ!!」

俺は宝くじを握りしめて玄関に向かう。
今度は車に引かれて死んでたまるか。

玄関のドアを開けると、俺が立っていた。

「よう、山田太郎2号」

「なっ……俺!?」

「ちがう、俺はオリジナルの山田太郎。
 その宝くじは俺のものだ、渡してもらおう」

「あんな状態から生き返ったのかよ!?」

俺は今ほど現代医療の向上を憎んだことはない。
あのまま死んでくれてればよかったのに!

「その宝くじを買ったのはオリジナルの俺だ。
 お前が横どりするなんておかしい」

「でも!! 今は俺が山田太郎だ!
 オリジナルかどうかなんて関係ないだろ!!」

「お前は俺を引き継いでいるだけじゃないか。
 宝くじを買う決断をしたのは俺だ」

「過去がどうかなんて関係ない!
 今、現在が大事なんだ!!」

そう、今の俺にはオリジナルよりもずっと充実している。
友達も多いし、彼女もいるし、部下も多くいる。

「俺が金を手に入れたほうがずっと意味のあることなんだ!
 お前みたいに自分の利益だけに生きる人間とは違う!」

「お前……!」

絶対に渡すものか。
今は俺が山田太郎なんだ。


「……そうか、わかった」

「えっ?」

「2号、お前の勝ちだ。俺はあきらめる」

オリジナルはつかんでいた宝くじを離した。

「2号、お前の記憶までは引き継がれていない。
 だからお前が何をしているかはわからない。
 でもそんなに必死になるんだから……もう俺を超えたんだろう」

「いいのか?」

「ああ、その宝くじはお前のものだ。
 だから、1つだけ約束してくれ。
 もし、また何か事故でもあったときは俺に渡すと」

「約束する。でも今度は事故に遭わないぜ」

俺は笑った。
車に注意しながら、宝くじ売り場に行って無事換金。
見たこともない大金に言葉を失った。

「よし、あとはちゃんと家に持って帰るだけだ」

ふたたび車に気を付けて、事故に遭わないよう注意した。
注意したかいあって無事家に持ち帰ることができた。

すると、家の前には背広の男が立っていた。

「山田太郎だな?」

「え? なんですか?」

「警察だ」

まさか宝くじを盗んだものと誤解したのか。

「ち、違いますよ!? このお金は宝くじです!
 売り場の人に確認してください! うそじゃない!」

「お前、何を言っている」
「え?」


「3号線で山田太郎という男性をひき殺したのは、
 山田太郎、お前だ。
 同姓同名相手をひき殺すなんて、因果な事件だ」

「山田太郎、ひき逃げの現行犯で逮捕する」

「待ってください!! 違うんです!!
 死んでない! 山田太郎は死んでないんです! 生きてる!」

「言い訳にしては無理あり過ぎるぞ」

冷たい手錠が手首に課せられた。
パトカーにのせられる直前、俺の家から山田太郎が笑顔で手を振っていた。

やっと気づいた。


「あいつ! オリジナルじゃなくて3号か!!」


オリジナルをひき殺した3号は
まんまと2号から大金を引き継いで悠々自適に暮らした。