小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「歴女先生教えて~」 第七話

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

「今の質問に答えられる人いますか?」

美穂は全体を見渡した。高木が手を挙げたので声をかけた。

「じゃあ、高木くん、答えて」

「はい、天智天皇(てんじてんのう)が死んで、息子の大友皇子(おおとものみこ)と弟の大海人皇子(おおあまのみこ)が皇位を争ったんですよね」

「そうね、正しくは初め大友皇子が即位して天皇になったの。明治になってこの天皇を弘文天皇(こうぶんてんのう)とおくり名を与えたけど、記紀には書かれてないから即位していないとされているの。兄の天智天皇は死の床で弟に息子を助けてやってくれ、と頼んだの。これに対して、大海人は身を引いて吉野へ僧となって兄の御霊を弔いたいと答えたの」

「先生、そうだとすればなぜ争いが起こったのですか?」

「そうよね。そこが問題よね。大津にあった都では大海人が吉野へ家族とわずかな家臣たちを引き連れて旅立った時、必ず反旗を翻して大友を攻めるとうわさになったの。都に残った高市皇子(たけちのみこ=大海人の長男)は、父に謀反の心が無いと自分が人質になり、大友を助けて政に参加していた。しかしね、大友の側近が吉野に隠れた大海人が密かに戦いの準備をしていることを知るの。これを聞かされた大友は、叔父にそのようなことはないと突っぱねて相手にしなかったから、準備が遅れて取り返しがつかなくなってしまったのよね」

「大海人は最初から作戦を練っていたという訳ですか?」

「そうね、天智天皇が無くなった時は都では圧倒的に息子の大友を味方する側近たちが勢力を誇っていたから、直ぐに戦闘になれば負けると踏んでいたのよ。なので、自分には争う意思はないと恭順な態度を示して、妻のうののさららと息子の草壁皇子(くさかべのみこ)ら数人で大津を出立したの。長男の高市は大海人が発起した時、命からがらで大津を脱出して合流した」

「大海人の勝因は何ですか?」

「そうね、記紀では人望みたいなことが書かれているけど、真実は作戦勝ちね。大津の政権に不満を持つ豪族たちを味方にしたことと、新羅(しらぎ)系の渡来人たちを仲間に引き入れたことが大きかったわね。先に不破の関という美濃尾張地方からの関所を封鎖したことで、大津に援軍が着けなくなってしまった。そしてその敵を大海人は味方にした。この時点で勝負は決まったの」

「大人と子供の争いでしたね」

「うん、大友は見方が甘かったのよね。早くに側近たちのいうことを聞いて吉野を攻めるべきだった。戦いは運もあるけど、先手必勝よね」

「恋愛と同じですね、先手必勝」

「高木くんは本当にそう思うの?」

「後からどんなに口説いても女心は変わらないでしょう?男みたいに可愛いと乗り換えよう~なんて思わないからです」

「高木くんはかわいい子がいると乗り換えたいのね?」

「ええ?一般論です」

「墓穴を掘ったわね、ハハハ~」

高木は情けない顔をして加藤の方を見た。ただ、相手は笑っているだけだった。