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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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アンドロイドの月バトル

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「さあ! あの夜空を見てください!
 このように月がきれいになったでしょう!
 これこそ、最新のバージョンアップなんです!」

アンドロイド人間たちが住む町。
いたるところに工場ができいているなか、
とある一角で声高に宣伝している男がいた。

「ロボットOS9にバージョンアップすれば、
 みなさんもこの素晴らしい名月を見ることができますよ!」


「他にはどんなバージョンアップが?」

「ないです!」

「え」

「月がきれいに見えるだけです!
 余計なものはなにもいらない、そう、ロボットOSならね!」

まさに思い切ったバージョンアップ。
バージョンアップ事態もタダではない。

「どうする?」

「でも、OS8のときみたいにおしぼりが出てくる機能とか
 余計な機能がついているわけでもないし……」

悩む人もいたが、だいたいがバージョンアップに応じた。

「おお! すごい! 確かに変わっている!」

おしぼりを出す機能よりも明確に差がわかるので、
バージョンアップを施した人は大いに喜んだ。

「ふん、わしは絶対にバージョンアップしないぞ」

そんな中、がんとして更新に応じない人もいた。
これはいいカモだとばかりに、競合他社がこぞって勧誘の手を伸ばす。

「では、こちらのROS1.9に乗り換えませんか!?
 最近、新しく工場もできたのでぴっかぴかの新品です!
 ロボットOSよりもキレイな月が見れますよ!」

「いえいえ! ならばこっちの方がきれいに見えます!
 これから新しい生産ラインを作ってできる最新OS!
 今ならあなただけ特別に先行体験させちゃいます!」

月がきれいに見えるようにと、機能拡張のために工場は増える。
熾烈な客の取り合いは始まっていた。


「いらん! バージョンアップなど、いらん!」

が、けして男は応じなかった。
そうこうしているうちに各企業はどんどん精度を高めていく。

「ロボットOS100なら、4K映像で見れますよ!」
「ROS991なら、3D映像で見れます!」
「SOS:2-1なら、色彩が鮮やかです!」

バージョンアップしていないアンドロイドは、
頑固な男だけとなり、しだいに格差からくる差別が生まれ始めた。

「あいつ、まだバージョンアップしてないんだぜ」
「えーー。まだあんなピンボケの月を見てるの?」
「時代は月なのに。まったく遅れてるぜ」


「ふん! わしは誰よりも月を美しく見れる方法を知ってるわ!」

男は鼻を鳴らした。
単なる強がりだと流した人もいたが、各企業はむしろ食いついた。

「どうやって!? どうすれば月がもっとキレイに?!」
「教えてくれ! ほかの工場に負けたくない!」
「他の工場には教えるなよ!! 俺のとこだけ教えてくれ!!」

なんとしても売りたい。
工場長たちは必死に男にくいついた。

男はひとりひとり別室に呼ぶと快く返事をした。

「ああ、いいとも。では、明日、従業員全員とここに来てほしい」

同じことをすべての相手に伝えた。
誰もが「自分だけに教えてくれる」と思っていた。



翌日、工場の従業員全員を連れて工場長がやってきた。

空を見上げると、男の言った通りどのバージョンアップよりも
美しくきれいにくっきりと月が見えていた。

「おお……なんて美しい……!」
「いったいどんな技術なんだ……!!」
「すごい! まさに神の所業だ!」

工場の人たちは競合他社がこの場にいることも忘れ、
しばし美しい月に息をのんだ。

やがて、男が現れるといっせいに食いついた。

「教えてくれ! いったいなんて技術なんだ!」
「どんな魔法を使ったらここまで月がきれいになるんだ!」
「金なら払う! この最新技術を教えてくれ!」

男はにこりと笑って答えた。



「お前ら全員の工場をストップさせれば、スモッグがなくなるんだよ」