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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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私、ノベリストと結婚します!

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このサイトを開くたび、私の胸は高鳴る。
心臓はどきどきして頭はサイトでいっぱい。

「ああ、間違いない……これが恋なのね……!」

私は小説投稿サイトに恋をしてしまった。

できればこのサイトと結婚したい、
あわよくば子供なんて作ってみたい。

そんな想像がリアルに頭に浮かんでは消えていく。

このことを友達に話すとすぐに精神病院へと連れて行かれた。

「大丈夫! 私は大丈夫よ! しっかりしてるわ!」

「サイトと結婚したいなんて普通じゃないでしょ!?」

「ちゃんと話を聞けばわかるから!」

このままでは精神病棟に隔離されそうなので、
私がこのサイトといかに親密な日々を過ごしてきたのか話した。

「毎日ログインするたびに、私の小説を広げてくれて。
 私のページを用意してくれて、人とのコミュニケーションを広げてくれる。
 これが理想の結婚相手じゃなくてなんなの!?」

「ただのサイトだよ!」

2時間の説得のかいなく、私の恋心は理解されなかった。
こうなればこの恋を進められるのは自分自身。

家に戻って、サイトにログインした。

「こ、こんにちは……///」

思わずディスプレイに声をかける。
彼(サイト)は何も言わずに、ただ私の情報を表示する。
そんな武骨で不器用なところがステキ。

「ふぅ……いったいどうすれば結婚できるのかな……」

結婚式場にノートパソコンを持って行っても結婚はできない。
そもそも、実体の私とネット上の彼との間には越えられない壁がある。

「そうだ! 私をデジタルにすればいいのよ!」

超えられない壁を超える方法はすぐに閃いた。

自分のスリーサイズから好きな食べ物、
髪の毛の長さに至るまでの細かい情報を入力し
何か入力すると私が答えそうな答えを返答してくれる電子アンドロイド。

ものすごい費用はかかったけど、結婚できるなら安い出費。

「うん! これならネット上に私がいるも同然ね!」

ネット上で公開して初めて問題に気付いた。
恋は盲目を思い知った。

「はっ! これじゃ結局結婚なんてできてないじゃない……」

私はあくまで「ネット上の私」を作っただけで、
彼(小説投稿サイト)と結婚はできていない。

彼の中に、ネット上の私の情報を書き込んだところで
それは「お客様」として投稿されて終わり。結婚はしていない。

「ああ……なんてこと……ネット上で私を作っても、さらに距離を感じるなんて……」

同じネット上でも彼は振り向いてくれない。
私の書いたものをお客様として掲載するのが彼の仕事。
その先の関係になることは……。


「いや、あるわ! 彼と結婚する方法が!」


私はサイトの勉強をはじめた。
彼のためなら何でもできる気がする。

数週間後、私は大規模な小説投稿サイトを別に作り上げた。

「それでは、誓いの登録(キス)を……」

「これなんの儀式ですか?」
「いいから!!」

彼(サイト)の管理人を説得して登録してもらった。

「これで健やかなるときも病める時も、
 私と彼は夫婦サイトとしてリンクという絆でつながった!」

「大丈夫かこの人……」

かくして彼の初めての結婚(とうろく)相手になった私のサイト。
まもなく二人の間にはいくつもの子供が生まれた。
今では幸せな日々を過ごしている。




「なんかこのサイト、やたら広告多いな……」

そのサイトに訪れた人は小説を超す広告の量に驚く。
サイト同士の愛の結晶だと気付く人は少ない。