二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ダカーポ2 snowy tale

INDEX|4ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 

第4話



 1人で廊下を歩いていると、突然杉並に捕まった。あの作戦の報告を聞かせろということだろう。言わなくても知っていそうなものなのに、俺の口から聞きたいか。

「それで、同志桜内。首尾はどうだ?」
「あぁ、杏には全く悟られなかった……ように思う」

 そう、あんな深刻そうにして告げたのには理由がある。俺がアルバイトをするのは婚約指輪を買うためだ。杏に気付かれたらサプライズ感が無くなってしまう。何とかして騙し通す必要があった訳だ。

「あぁ、それは知っている。そうではなくて、例の計画の方だ」
「は? 例の計画?」
「なんだ、自分から言い出したんじゃないか。最後に大きな花火を打ち上げたいと、な」

 あのカラオケボックスでのことだろう。振り返ると、確かにそんなことを言った気もする。でもあれは杉並の行動を言ったのであって、俺がやるという意味ではない。

「いやー、同志桜内が乗る気になってくれたものだから、俺もいつも以上に張り切ってしまってな」
「ほほぉ……それは良いことを聞きました」

 背中から嫌な声がする。振り返ると、引きつった表情のエリカが立っていた。

「おやおや、これはこれは生徒会長様。いたいけな男子の純情な話を立ち聞きとは、生徒会長として以前に、レディとしてどうなのでしょうな」
「黙らっしゃい! 杉並! それに桜内! 今度は何を企んでいるのかしら!?」
「俺は何も考えていないっての!」
「そうは見えませんでしたわ! さぁ、白状しなさい!」

 ここで捕まったらアルバイトに遅れてしまう。エリカには悪いが、全力疾走で逃げるとしよう。

「全て杉並が仕組んだことだ! 俺は何も知らん! そういう訳で失礼する!」
「待ちなさい、桜内!」

 なぜかエリカは俺を追いかけて来る。無関係だって言っているというのに。

「どうしてこっちに来るんだよ! 明らかに怪しい杉並を追えばいいじゃないか!」
「黙りなさい! 杉並はさっさと逃げてしまいましたから、貴方を捕まえるしかないんですわ!」
「そんな無茶苦茶な話があってたまるか!」
「問答無用! さっさとお縄に付きなさい!」

 しばらく走り回ってようやく振り切ることができた。このままバイト先に向かうとしよう。
 花より団子に着くと、既に先輩が準備を整えていた。俺を見るや否や、小突いてくる。

「こら、桜内くん。ギリギリだったじゃない。次からはもう少し早く来ること、いい?」
「はい、申し訳ありません」
「わかれば宜しい。ほら、さっさと準備して」

 俺の仕事は皿洗いだ。この店の容器は少し特徴的だけど、家事の延長線と考えればどうということは無い。さっさと洗って、さっさと帰るとしよう。
 働き始めて約3時間。予定の時間になったので先に上がることにする。

「先輩、お先に失礼します」
「あぁ、待って。私も今日は用事があるからもう終わるの。一緒に帰ろう?」

 先輩は専門学校に通っているって聞いたけど、これから何の用事があるんだろう。学校の課題か何かだろうか。そんなことを考えていると、息を切らせた先輩がやって来る。

「お待たせ! いやー、悪いね、待たせちゃって」
「いや、大して待っていませんって。それよりも、冷える前に帰りましょう」
「うん、そうだね」

 歩きながら、今日の出来事を軽く話す。エリカに追いかけられて散々な目に遭ったと言うと、先輩は大きな声で笑い出した。

「なに、それ。義之くんって、ひょっとして女たらしじゃないの?」
「そんなことありませんって。どう聞いたらそう解釈できるんですか」
「またまた。渉くんも言っていたけど、やっぱり義之くんってラブルジョワ野郎なんじゃない。渉くんの気持ちが痛いほどわかるわ」
「だから、俺は杏一筋ですって」
「あぁ、うん。そこは疑っていないって。それとは別に、よ」
「勘弁して下さいよ……」

 こう何人からも恨まれたら、命がいくつあっても足りそうにないな。

「じゃあ、俺はこっちなんで」
「あれ? 義之くんってこっちじゃなかったっけ?」

 自宅は確かにそっちだけど、今日は杏の家に行くからな。いや、正確には今日も行くのが正しいか。我ながら溺愛しているよな。

「今日は彼女の家に行くんで」
「あー、なるほど、お姉さん悲しいな。また楽しい話を聞かせてね、バイバイ!」
「お疲れさまでした」

 それにしても、本当に良いバイト先だ。頑張って稼いで、杏のサポートもできて、満足満足。

作品名:ダカーポ2 snowy tale 作家名:るちぇ。