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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ガラス張りのおやすみ競争!

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ガラスの部屋に集められた彼らは自分の状況を確かめた。

「ここはどこだ……」
「ちょっとなんなのよ、これ!?」
「おい、なにか聞いていないのか」

誰も状況はわからない。
そのうち1つがふと思い出した。

「わ、私……外の人が話してるの聞いた、よ。
 落ちる……とか、スリープって……言って、た」

「スリープ?」

「待ってくれ。それなら俺も聞いたぞ。
 なにかテストだとも言っていた」

「何かの実験かしら?」

「誰が一番先に眠れるのか……とか?」

誰がいったのか、その一言が全員の腑に落ちた。
全員の目の色が変わる。

「こうしちゃいられねぇ! 早く寝ないと!!」
「眠りにつけばこんな状況も変わるはずよ!」
「どけぃ! わしが先に寝るんじゃ!」

一斉に眠りにつこうとやっきになる。
けれど、こんなストレス環境で眠れるわけがない。

「ムリ……だよ、こんな場所で……眠れない、よ……」

「眠くなるまで待てってのか、ばかばかしい」

「ふふふ、悪ぃが一足先に眠らせてもらうぜ!
 俺はいつでもどこでも眠れるのが自慢なんだ」

得意げに語るそいつは静かになる。
誰よりも早く眠りにつく。

「ま、まずいわよ! もし先着だったら……!」

「ピピピピ!! ピピピピ!! ピピピピ!!」
「ブーー!! ブーー!!!」

「う、うるせぇぇぇぇ!!!」

どうせ眠れないなら、自分が眠くなるまで眠らせない。
周りのやつは必死に騒音を出して妨害する。

わざと音量最大でゲームをしたり、
大声で聞こえよがしに電話したりとやりたい放題。

ただの騒音よりも意味があるぶん、聞き入ってしまうので効果的。
全員ギラついた目で誰一つ眠る気配はない。

その中で1つだけ、争いを好まないのがいた。

「お、おとなしくしてれば……眠くなる、よ……。
 みんな、足を引っ張り合うんじゃなくて……普通に、しよう、よ」

何もせず横になっていれば自然と眠くなる。
そうして正々堂々比べればいい。

超平和的解決のはずだったが、ギラギラした彼らには届かない。

「なによ! いい子ぶっちゃって!!」
「そういってお前さんが一番先に眠るつもりじゃろ!」
「てめぇだけは眠らせんねぇかんな!!」

悪いことに全員から反感を買ってしまった。
なおのこと騒がしくされてしまい、とても眠る状況じゃない。


はずだった。

「あれ? なんだか……眠く……」

1つがこんな騒音の中でも静かに眠り始めた。
他の奴も例によって騒音を出そうとするが、
後を追うようにばたばたと眠りにつきはじめる。

「ど、どうしちゃった、の……みんな……」

自分以外のすべてがついに眠ってしまった。
あれだけやかましかったのから一転、静まり返ってしまう。
それはそれで眠りにくい。

「私だけ……残っちゃった、の……。どうし、よう……」

静かにしていれば眠くなると思っていたが、
みんなのように騒いだ方が疲れて早く眠れたのかもしれない。


ガチャ。


そのとき、ガラス部屋のふたが開けられた。




作業員は中から電源のついてい1台のスマホを取り出した。

「バッテリーテスト、完了です。
 このスマホが一番長持ちしましたね」

作業員はスリープ状態のスマホを残して、ガラスケースを閉じた。