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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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--- 2 神通の艤装



 明石から(こっそりと)神通の艤装のコアユニットを受け取った那美恵。これで生徒会室には艤装が2つ存在することになる。時間も時間なので那美恵たちはそれぞれの教室に戻り、午後の授業を受け始めた。

 その日の放課後。夕方、那美恵達は生徒会室へと集まった。流留は生徒会メンバーではないのでそう何度も生徒会室に行くのをためらって校内をぶらぶらしつつ、三戸とメッセンジャーにて会話をしていた。だが部室のない艦娘部としては今は仮に生徒会室を使おうと那美恵から言われて来るように勧められていたため、やや申し訳無さそうにしながらも少し遅れて生徒会室へと入っていった。

 その日はコアユニットだけとはいえ一応艤装が二つある状態なので那美恵たちは艦娘の展示もするつもりである。ただ川内は流留が同調できたということで、これ以上展示で使うつもりは那美恵にはなかった。そして、川内の艤装はこの日中に流留に再度同調を試させて返しに行く。

 遅れて生徒会室に入ってきた流留は、那美恵がすでに準備をして待っている事に気付いて慌てて駆け寄った。
「あ、生徒会長。遅れてごめんなさい。」
「いーよいーよ。それじゃ、さっそくはじめよっか。」
「はい。」

 二人が同調を試し始めるのと同時に三千花たちは艦娘の展示のパネル運び出しを終える頃だった。その様子を見た流留は那美恵に聞いてみた。
 その質問に、三千花たちを特に気にかけるわけでもなく普段通りの軽い口調で那美恵は答える。
「あ〜。みっちゃんたちには展示を優先してやってもらうの。んで、あたしと内田さんは同調を試した後、その足で鎮守府に行くよ。内田さんは都合はいい?」
「はい。大丈夫です。でも副会長たちに任せたままでいいんですか?」
「だいじょーぶじょーぶ。これでも一週間ほどすでに展示してるんだもの。あたしたちは気にせずいこー。」

 那美恵の口ぶりからはなんの心配もないという雰囲気が感じ取れたので、流留はそれじゃあと、もう何も気にせず川内の艤装との同調をし始めることにした。


ドクン


 前回、流留が最初に同調した時のような恥ずかしい感覚は起きなかったが、近い感覚に襲われた。下半身に熱が集まっていくのを感じる。それはすぐに収まったので事なきを得たが、もしこの場に男子である三戸がいたら少々気まずいことになっていたかもしれないと流留は余計な心配をした。

 那美恵は流留の様子を見て、まったく問題なく同調できていると把握した。タブレットのアプリで数値を見ると、90.04%と、若干数値が上がっていた。
 その上昇は、流留の心に以前は引っかかっていた日常の崩壊への恐怖や変化することの恐れというネガティブさが消滅した(無意識に心の奥深くに隠した)ことで精神力を安定させ、同調率を高めたのだった。
 このあたりの真相を流留はもちろん、那美恵ですら知る由もなかった。

「うん。内田さんは90.04%、なんか上がってるし問題ないね。あとはこれを提督に伝えに行けばあなたは晴れて川内だよ! 艦娘になれるんだよ。」
「あたしもやっと艦娘、そして鎮守府に行けるんだぁ〜。」
 流留は喜びをうっとり顔から垂れ流している。
「内田さん、よだれよだれ!女の子がはしたないよ!」
 那美恵から指摘されて流留は慌てて口元を人差し指で拭った。


--

 流留の同調が終わったので、次は本題である神通の艤装との同調である。那美恵は三千花たちに持って行かせずに手元に残しておいた神通の艤装のコアユニットをベルトと一緒に腰に巻いた。流留にはタブレットを持たせて、最初の同調のために電源をつけさせる。

「会長。じゃー電源つけますよ〜。」
「はい。おねがい!」

 流留は教わったとおりにアプリ上で神通の艤装(のコアユニット)の電源をオンにした。そして今まで那珂と川内の二つの艦娘の艤装の同調に成功しているという那美恵の様子の変化を楽しみに眺めた。
 那美恵は呼吸を整え、精神を落ち着ける。これまでの2つの艤装のときと同様に腰のあたりから上半身と下半身に向けて電撃のような感覚が走りぬき、そののち関節にギシッとした痛みを感じた。それらは一瞬である。そこまでの刹那、那珂とも川内とも違う情景が頭の中に浮かんでは消える。そこまでは今までの同調と同じだった。が、突然那美恵の思考が乱され、頭痛が呼び起こされる。今までよりも重い情報量が脳に貯まる感覚を覚えた。
 途中で那珂との初めての同調の時に見た情景、川内との初めての同調の時に見た情景が混じる。いくつもの既視の情景が走馬灯のように脳裏をうつりゆく最後、那美恵が見たのは、目前に2つの光る目のようなものを持つ化物と対峙する自分視点の誰かであった。それは艦船ではないことは確かで、その誰かが左腕をあげると、腕の先にあるべき手のひらがなく、脇腹から大量の血を流す姿だった。
 不吉なモノを垣間見たためか、それとも新しい艤装と同調を試しすぎたためかわからないが、頭に異様な激痛が走り吐き気を催して膝をガクッとついた。
「い、痛っ! ……頭が痛いよぉ!!!」
 思わず那美恵はへたり込んで土下座のような体勢になるも、肩で息をしながらなんとか完全に倒れるのを防ぐ。
「会長!大丈夫ですか!!?」
 初めて見る那美恵の苦しむ姿にうろたえる流留。タブレットを机に置いて那美恵に近寄って肩を支えようとする。
 しかしそれを那美恵は思い切り振り払った。

「あ、あぶない!内田さん……近寄らないで!!」
「きゃっ!!」

 普通の女子高生の力であれば思い切り振り払ったところで相手は大した衝撃にはならない。が、このとき那美恵はすでに艦娘神通になっており、コアユニットから伝わる軍艦の情報による力は、それを受け止め、うまく制御する艤装の他の部位がないために、ダイレクトに腕に伝わっていた。肩に触れようとした流留を”文字通り”思い切り弾き飛ばした。

バン!!!
ズルズル……

 流留は生徒会室の宙を舞い、天井近くの壁に激突したあと、滑り落ちるように地面に落ちていった。瞬間、流留は呼吸困難に陥るが、すぐさま呼吸を取り戻した。

「かはっ!はぁ!はぁ! 生徒会長!? これ……一体!?」

「お願い……タブ…レットから電源を……落として。あたしじゃ制御できない……!」
「は、はい!」
 那美恵はうずくまったまま、苦しそうな口調で流留に向かって声を弱々しくひねり出した。それに流留はすぐさま返事をした。流留は先ほど机に置いたタブレットを手に取り、アプリ上で電源をオフにする。すると那美恵の身体、腰のあたりからシューという音がしたのち、那美恵の表情が柔らかくなり、平静を取り戻したように見えた。

「はぁ……はぁ……。あ、ありが…と。」