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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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--- 7 幕間:艦娘たちの語らい



 一同は本館のロビーで集まることにした。ちょうど19時になる頃合い、執務室の戸締まりをした提督と付き添いの那美恵がロビーに来ると、五月雨たちと先に行かせた流留と幸が集まって話をしている。幸は明らかに話の輪に加わることができていないが、うっすらとはにかんでいるので雰囲気は楽しそうだと那美恵も提督も感じた。幸の態度を多少知ってる那美恵は、少し時間はかかるだろうがこの分であれば、幸もすぐに鎮守府に慣れ、みんなと仲良くなれるだろうと期待を持つのだった。

「おまたせ。あとは明石さんたちだけかな?」
「はい。そうです。」五月雨が答えた。
「そういや五月雨。更衣室とかその辺の戸締まりは大丈夫かな?俺が入ったらまずいところ。」
「今日は窓とか開けてなかったと思いますけど……ちょっと不安なので見てきます!」
 そう言って駈け出してロビーから離れていく五月雨。
「あ!さみちょっと待って!僕も行くよ。」
 心配になった時雨が彼女についていった。


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 五月雨と時雨が更衣室や女子トイレの戸締まりを確認しに行っている間、残りの6人はロビーで会話をしたりぼーっとしたりして待っていた。しばらくして明石と技師の女性が本館へと入ってきた。
「お待たせしましたー。おお、ロビーまだ涼しいですね。助かりますね〜。」
 明石と技師の女性はパタパタとフェイスタオルで仰いで涼しさを味わう。夏場の工廠は非常に蒸すため、明石たち職員は長時間の作業は控えて工廠内の事務所に入ることが多い。
「お、明石さんに○○さん。今五月雨と時雨が戸締まり見に行ってるからちょっと待っててください。」
「はい了解です。今のうちに涼んでおきます。」

 しばらくして五月雨と時雨が階段を降りて戻ってきたので提督はロビーのエアコンのコントローラーのある場所まで行き、エアコンの電源を切って、本館内の空調設備をすべて落とした。
 提督がロビーの裏の部屋からでてきたのを全員が見届けると提督が辿り着くのを待たずに全員玄関から外に出る。提督はそれに合わせてロビーの電灯を消して非常灯だけにし、最後に外に出て玄関の鍵を締めた。ロビーは真っ暗ではなく非常灯だけが薄ぼんやりと、辺りを照らしきれない弱い光を発していた。


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「よし、みんな行こうか。何が食べたい?」

「豪華なフランス料理〜!」
「はったおすぞ?」
「エヘヘ〜」
 提督がみんなに意見を求めると、すぐさまそれに冗談で返す那美恵。提督が期待通りのツッコミをしてくれたので満足気な顔をして周りを見渡してくるりと回転する。
 五月雨や時雨など数人は那美恵がおそらく何かしら荒唐無稽な冗談を言うだろうなとわかっていたため、苦笑するだけである。

「コホン!気を取り直して、みんな何食べたい?といってもこの人数だから豪華なものは奢れないぞ?」

 那美恵達高校生組や五月雨達中学生組はわいわい話し出した。一行は本館前から正門のところまでをのんびりと歩きつつ、そんなおしゃべりを楽しむ。門を抜けて道路沿いの歩道を歩きながら、明石と技師の女性は提督からの質問に分をわきまえた要望を伝えた。
「普通にファミレスでいいんじゃないですか?中高生がいなければ飲み屋に行きたいですけど、さすがに今日は……ダメですよね?」
 技師の女性もそうですねと言って頷く。
「みんなはどうかな?ファミレスでいいかい?」
 明石たちの提案を受けて改めて提督は学生たちに尋ねた。
「あたしはいいよ〜。」と那美恵。
「あたしも食べられるならどこでも。」と流留。
「私もそこでいいですよ。」と五月雨。
「いつも行ってるファミレスですよね?いいんじゃないですか。」と時雨。
「そーいえばあそこのファミレス、夏の新メニュー出てたっぽい?食べてみたいよ〜。」と欲望丸出しの夕立。
 幸と村雨も口にこそ出さないがコクコクと頷いて承諾する。
 全員の意見が決まったところで提督は号令かけて、皆を駅までの途中にあるチェーン店のファミリーレストランに連れて行くことにした。


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 10人揃ってファミリーレストランに入った。今回は誰も艦娘の優待特典を使わない。提督が本気で奢ると宣言したからだ。
 9人は思い思いの料理を注文した。たくさん頼むと息巻いてはみたが、なんだかんだで皆少食気味だったり、遠慮した結果となった。せいぜい2〜3人で1つずつのサラダを追加で頼むくらいである。
 各自の料理が運ばれてくる。そんな中、明らかに量が多い料理が二人の目の前に配膳された。夕立と流留である。その量には頼んだ本人たちも驚いたが、周りの8人はもっと仰天した。遠慮せずにガッツリとした料理を頼んだ二人にツッコミが入る。
「お、おい二人とも……そんなに食べられるのか?」と提督。
「あたしは大丈夫だよ。昔から結構量食べて育ったから。」
「あたしは育ち盛りだからぜーんぜん平気っぽーい!」
 遠慮という言葉を全く知らないのかとばかりの言い草に幸と時雨がツッコミの言葉を入れる。
「……内田さん。普通、こういうときは……遠慮したほうがいい……よ?」
「ゆうも!君はしょっちゅう提督にねだってるじゃないか。少し我慢を覚えなきゃ。」

 二人のツッコミはどこ吹く風、流留も夕立も一切気にせず料理を口に運び続ける。食事中は茶化しもふざけも一切しない那美恵は流留を見て一つため息をついたのち、食事を再開した。


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 食事も一段落し、艦娘たちは別腹と言わんばかりに食後のデザートを注文し、そしてドリンクバーを往復し始める。食事を少なくしたのはこのためだったのかと提督は思ったが、メインの料理を普通にガッツリ頼んだ流留と夕立も他の娘と同じ行動を取り始めたため、提督の予想は外れた。
 甘いモノは別腹、二千年代も70〜80年経っても、女性たちには当てはまるのだった。

 デザートが届き、各々おしゃべりしながら食べ始める。時雨と五月雨、夕立と村雨は隣同士で自身のデザートを分けあって食べている。那美恵と流留・幸はお互いあまりまだ知らないため分け合うということはせず普通に会話をしてデザートと一緒に堪能している。提督や明石たち大人勢もデザートを頼んだが、提督らは特に会話をすることもなく、若い子たちを眺め見ながら静かにデザートを口に運んでその場の雰囲気を調味料として味わっている。
 ふと、流留がポツリと呟いた。
「なんだか、艦娘って言っても、こうしてると普通の人たちなんですねぇ。」
「およ?どしたの流留ちゃん突然。」
 隣にいた那美恵がすぐに反応した。それにつられて提督や五月雨たちも流留に視線を向ける。皆の視線が集まったが流留は特に気にせず続ける。

「いやぁ。あたしさ、自分の生活とは全然違う環境ですごい人達がバリバリ活躍してるのが艦娘の世界なのかなぁって思ってたの。なみえさんのあの展示見て、深海凄艦っていう怖そうな化け物と戦う写真が異様に印象強く残っちゃって。そんな化け物と戦う人たちなんだから、きっとどこかの軍や自衛隊みたいなところなのかなぁって。」