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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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--- 5 艦娘になろうとする少女



 那美恵と流留はお昼時、約40分弱かけて鎮守府から高校へと登校してきた。艦娘たる少女たちが自身の学校に遅刻しても怒られずに済むのは、大本営(防衛省・厚生労働省・総務省の艤装装着者制度の担当部署をまとめた呼称)および鎮守府と、各学校の制度内における提携により、少女たちの学生生活の保障がされるからである。
 そのため二人は堂々と午後登校をすることができた。

 那美恵は手に紙袋をぶら下げている。それは午前中に同調の試験をして合格した神通の艤装のコアユニットだ。2度もこっそりと同調してすでに合格圏内の同調率を表していたのだが、怪しい問題があったため工作艦明石に相談したのち、改めて提督と明石の前で同調の確認をする羽目になっていた。
 3度目の正直ということわざがあるように、3度目の同調にて初めて(提督の許可を得て)公式に鎮守府外に持ち出せるようになったのだ。

 那美恵と流留が高校のある駅につき、途中にあるアーケード街を歩いている頃には、すでに12時30分をすぎていた。そのため通学路途中でパンや飲み物を買ってから学校へと戻っていった。校舎に入ると二人はその足ですぐに生徒会室へと向かった。神通の艤装を保管するためだ。
 校内はお昼を食べる生徒、校庭で遊ぶ生徒各々自由に振舞っているため、午後からの登校をしてきた那美恵と流留を特に気に留めない。ただ生徒たちが唯一気になったのは、なぜあの内田流留が俺達(私達)の生徒会長と一緒にいるのだろうと怪訝に思うくらいである。明らかな集団いじめは鳴りを潜めたとはいえ、一度根付いた印象により、実は流留へのいじめの根はわずかだが残っているのに那美恵も流留も気づいていない。
 ただ艦娘部に入った今は、先の対応もあって人々は気に留めない=実質的な無視という周りからの扱いは流留にとってむしろ好都合になっている。つまり気楽に艦娘の仕事に集中できるということである。

 二人が生徒会室に入ると、三千花と三戸、そして和子というおなじみの顔ぶれがあった。午後登校ということを三千花は那美恵と同じクラスかつ生徒会というために聞いていたので事情をわかっていた。一方の三戸と和子は知らされていなかったのであとで三千花から聞いてやっと事情を把握していた。

「おそよう二人とも。もう艦娘の用事は済んだの?」
 やや皮肉混じりの朝の挨拶をして三千花が尋ねた。

「うん。こうして神通の艤装も今度は提督から正式に許可もらって戻ってきたぜぃ!」
 那美恵は手に持っていた紙袋を掲げて示す。それを見た三千花らは思い思いの反応をする。
「おお!これで展示に新しい艤装が使えるんっすね!今度はどんな子が同調できるんっすかね〜?」
「三戸くんも楽しみぃ?」
 三戸の反応を見て那美恵が心境を聞いてみると、それに勢い良くはい!と三戸は答えて期待を大きくかけるのだった。

--

「そういえば昨日の展示の時も来たわよ、あの子。」
「え?また?」

 三千花が触れた”あの子”、それは以前より何度も川内の艤装との同調を試しに来ている、神先幸。和子の友人その人だ。一度同調できずに帰ったと思えば、翌日、翌々日、そして次の日と、何度も同調を試しに来るその少女、那美恵達はその少女のことをかなり気にかけていた。何度も同じことを試しにくればいいかげん覚えてしまい、気にするなというほうが無理な話だ。本人が気にしている以上に実は目立っている。
 神先幸は和子が語るところによると、成績はかなり良いが物静かで目立たない娘。友人の和子に対しても彼女は口数少なく人見知り、心の内をあまり明かさないことから、捉えどころがない少女だ。

「彼女なんて言ってた? 艤装ないって言ったんでしょ?」
「えぇ。ただ顔色一つ変えずにそうですかってポツリと言ってさっさと出ていってしまったわ。」
「さっちゃんが無愛想で申し訳ありません。」
「なんでわこちゃんが謝るのさww」
「いえ。友人としてはなんか申し訳なくて。」

 和子としては彼女の唯一の友人として、せめて先輩たちましてや生徒会長と副会長という生徒側の最高権威者トップ2に対してはきちんと接してほしいと思っていた。実のところ、幸の無愛想とも取れる態度による人間関係のいざこざが起こりそうな場合には、陰ながら和子がフォローをしていたのだ。和子は生徒会だけでなく、変わり者の友人に対してもかなり気を使うシーンがある日々を送っていた。
 そんな人知れず苦労人の和子は、幸のことがかなり気にいっている。幸がどう思っているかは和子は知る由もないが、友人のために苦労をするのがなんとなく性に合っている気がしているので、気を使ってフォローする行為も和子としては全然まったく嫌ではなかった。

「彼女、多分今日も来ますから今日は艤装があるって教えたらきっと喜びますよ。」
「神先さんの喜ぶ顔、いったいどんなんなんだろうね〜?」
「感情あまり出さなそうだから想像つかないわね……。」
「あの、その神先さんって?」

 幸の事情をまったく知らない流留が質問した。そういえばそうだったと那美恵は丁寧に説明してあげることにした。
「……というわけなの。」
「へぇ……じゃあその神先さんは艦娘になんとしてでもなりたいってことなんですかねぇ〜?」
「多分ね。直接本人から聞いたわけじゃないからホントのところはどうだかわからないけどね。」
「ふぅん。聞く限りだと変わり者っぽいなぁ〜」

 流留が言ったその一言、彼女以外の全員が心の中で”あんたも大概変わり者だよ”とツッコミを入れた。もちろん口には絶対に出さない。那美恵から見ても流留も神先幸も同じ程度に変わり者と思っている。さらに三千花からすれば、那美恵も流留も神先幸も3人とも十分変わり者だろとツッコミを入れるに十分な存在であった。

「ま、今日の展示で期待しよ。内田さんも今日から手伝ってくれる?艦娘の展示。」
「へ?あ〜まあいいですけど。でもあたしがいて大丈夫なんですかね?」
「なーに言ってるの!内田さんはもう立派な艦娘部の部員なんだよ!?この展示は主催艦娘部、共催生徒会っていう名目なんだから。部員である以上はきっちり手伝ってもらいます。いい?」
「あたしはてっきり鎮守府内でしか活動しなくていいのかと思ってましたよ……。」

 その日から艦娘の展示には流留も参加することになった。ただし、流留は未だ生徒たちからの印象が回復しておらず気まずいだろうということで、パネル等の運び出しと、艤装の同調の手伝いのため別区画で待機することになった。つまりなるべく他生徒と接触させない。