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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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--- 4 神通受け取り



 翌日、那美恵と流留は9時手前に鎮守府のある町の駅の改札口付近で待ち合わせした。

「おはよ、内田さん!準備おっけぃ?」
「はい。問題ないでっす!」

 軽く言葉を交わし合った後鎮守府に向けて歩いて行く。鎮守府に到着した二人はまず本館に入り、執務室を目指す。後ろから流留がついてくる。
 コンコンとノックをする。すると、中からは男性の声が聞こえてきた。
「失礼します。」
 那美恵は丁寧に言い扉を開けて中に入る。

「おはよ、提督!」
「おぉ、光主さん。その後はどうだい?そっちの状況ちゃんと聞いてなかったから心配でさ。」
「うん。ついにね、川内の艤装と同調できた生徒見つけたよ。んで、ちゃんと艦娘になる意思も。さ、内田さん自己紹介自己紹介!」

 流留はついに待ち焦がれた、提督なる存在を目の当たりにした。そこに立っているのは、彼女にとっては見知らぬ男性ではあったがどことなく懐かしい感じのする人だった。
 思わずどもりながらしゃべるかたちになる。

「あ、どうも!……じゃなくて初めまして。あたし、内田流留っていいます。○○高校1年です。この度川内の艤装と同調できて、川内になりたいと思ってます。よろしくお願いします!」
「はい。初めまして。君なんですね。川内の艤装に合格できたのは。いや〜うれしいよ軽巡が増えるのは。どうか、俺たちの力になってください。」
「はい!」

 ものすごく舞い上がり気味の返事をする流留。それを脇で見ていた那美恵は、その反応に怪訝な様子を感じるも、特にそれ以上は気にしないでいた。
 ひと通り互いの挨拶が終わって落ち着いた空気になった頃を見計らって那美恵は前日のことを提督に伝えた。すると提督は大体ほとんど明石と同じ反応を示し、二人にこう言った。
「あ〜そうか。そうだったな。きみが突飛な提案するもんだから俺もそれに引きずられてすっかり忘れてたよ。五月雨の指摘がなかったら危なかったわ。五月雨のいざというときの仕事っぷりに感謝感謝。」
「も〜しっかりしてよ。普段のドジっ子は五月雨ちゃんだけで十分だってぇ。」
「ハハハ、ゴメンゴメン。」

「で、どうすればいいの?内田さん、今日中に同調の試験させてもらえるの?」
「あぁ、それは大丈夫。今から工廠行って明石さんと俺とでチェックするよ。それを今日中に大本営に連絡する。学生艦娘制度内のことなら多分すぐに承認されると思うから、そしたらすぐに準備に取り掛かれるよ。」
 提督の説明に那珂は思い出したことを茶化し気味に反芻する。
「準備ってことは、つまり内田さんのボティチェックするんだよね?」
「……その言い方はやめなさい。身体測定って言いなさい。」
「アハハ。まだあたしの時の根に持ってる?せっかくだから今度こそ提督自ら内田さんの身体測定してあげれば?」
「だーから、そういう冗談はやめてくれy


「え!?提督に何かしてもらえるんですか?お願いします!!」



 提督と那美恵の掛け合いを話半分で聞いていた流留はそれを真に受けてしまった。というよりその辺りの事情がよくわかっていないがための発言だ。
「えっ?あ、あのぉ内田さん?そんな真に受けられても逆に困るんですけど……?」
 てっきり突っ込んでくれるかと思いボケてみたのだが、真に受けられて那美恵は慌てた。提督はなおいっそう慌てる。
「う、内田さん?」
 流留はキラキラした目で提督を見ている。提督はもちろんのこと、那美恵もどことなく調子が狂ってしまった。

「ちょっとすまないね。」
 そう言って提督は那美恵の肩を軽く叩いて流留から少し離れたところに引き寄せる。そして小声で流留のことを尋ねた。
「なぁ。あの子ちょっとアレなのか?天然入ってたりする?」
「ううん。そんなことはないはずだけど……あ!もしかして。」
「何か思い当たることがあるのか?」
「実はね…」

 那美恵は先日流留より直接聞いた彼女自身のことで、一つ関係しそうなことを思い出しながら提督に打ち明けた。
 それは、先日まで関わっていた流留の集団いじめのことだった。実のところ流留がさきほどのような態度を取った原因は、そのいじめのときの体験だけではないのだが、那美恵は流留から彼女の本当の身のうちをすべて聞いたわけではないので、今このときは学校での出来事をオブラートに包んで伝えるのみにした。それを聞いた提督は苦々しい顔をして、流留をチラリと眺め見た後言った。
「そうか。そういうことがあったのか。もしかしてそれで同性不信気味で、余計男性に過剰に接するようになりかけているのかもしれないな。ただ、どうもそれだけじゃない気がするな。」
「どういうこと?」
 提督の懸念が気になったので那美恵は尋ねる。
「いやな?さっきから俺を見る目がちょっとキラッキラしてるんだよ。なんだか妙に期待されてるというか、もしかして……惚れられたとか。」
 提督の最後の一言を聞いて、瞬間那美恵はポカーンとし、数秒後に思わず失笑して提督の肩をパシパシと叩いてツッコミを入れた。

「プッ!アハハ! ちょっと提督、自意識過剰〜!それはどーだろ?いくら彼女でも、提督にぃ〜」

 離れたところでケラケラと笑い始めた那美恵を見てビクッとする流留。二人が何を話しているのかよくわからずあっけにとられている。肩をパシパシ叩かれた提督は少し赤面して那美恵に言い返す。
「いや、俺はそんなつもりじゃ……」
「じゃあどーいうつもりなの?」
 那美恵は口を尖らせ少しかがんで提督をやや下から見上げるように返す。提督は赤面しつつ那美恵から視線を少しずらして拗ねたような口調で答えた。

「ともかく、なんか気になったんだよ。」

 気になった。その一言に、那美恵は心にズキッとくる。
「ん。いいよ別に。提督がどう思おうがお任せするよ。けどね、うちの後輩を傷つけたら、許さないからね?ただでさえ先のようなことがあったのに。艦娘の世界でも何かあったら彼女本当に苦しんじゃうもん。提督はあたしたちみんなを気にかける立場なんだから、誰か一人にかまけたりしたら、ダメだよ?」
「あぁ、わかってるって。」
 二人が長々と離れたところで話しているので、いい加減苛立たしくなってきた流留は二人に向かって叫んだ。
「ちょっと二人共!いい加減あたしを仲間はずれにするの、やめてもらえます?」
「あぁ、すまんすまん。」
「ゴメンね、内田さん。」
 提督と那美恵は慌てて流留のそばに小走りで駆け寄っていった。