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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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指摘しない優しい町

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「今日から赴任することになりました!
 よろしくお願いします!!」

「やぁ、君が今日からこの地区を担当する刑事だね。
 だが安心するといいよ。
 ここは隣の『指摘する町』と違って、平和そのものだから」

「そうなんですか?」

「ここは『指摘しない町』だからね。
 君も、この街の平和を守るために一緒に指摘者を捕まえよう」

ビービービー!

「おっと、さっそく仕事みたいだ。行くよ!」

現場につくと、ファミレスで男が暴れていた。
先輩は男を羽交い絞めにして、俺が手錠をつける。

「ちくしょう! なんだってんだよ!
 この店が注文を間違えたから、それを指摘しただけじゃねぇか!」

「それがいけないんだ! 指摘は絶対に許さない!」

男は車に乗せられて運ばれていった。
行き先はわからない。

ビービービー!

「またか。まったく、今日は忙しいな」

先輩に連れられて次の現場へ。
今度は電車のホームで女性がいがみあっていた。

「私の何がいけないのよ!
 この人、値札つけっぱなしだったのを指摘しただけじゃない!」

「それが重罪なんだ!」

女は手錠をかけられて、運ばれていった。
やっぱり行き先はわからない。


「あのぅ、指摘をすることがそんなに悪い事なんですか?」

「君はよそ出身だからわからないかもしれないが、悪い事なんだ。
 指摘程度だと思うかもしれないが、
 これがつもりつもって争いの火種になってしまう」

「……そうなんですね」

この街が平和なのも、
こうして指摘をしない街づくりを徹底しているからかもしれない。
下手に町のシステムに口を出すのはやめておこう。

パトロールが終わって会社に戻ると、
ひとりの少年が警察署に向かって抗議活動をしていた。

「指摘しないなんておかしい!! こんなの間違ってるーー!」

「おい、行くぞ」
「はい」

もう俺も慣れたもので、先輩のサポートをして
暴れる少年を捕まえることに成功。

「それじゃあとは任せたよ。
 この少年を警察署の取調室へ運んでくれ」

先輩の指示通り、少年を取り調べ室へと運んだ。

「……なぁ、あんたこの街のありかたが正しいと思ってるのか?」

「正しいって……そういわれてもなぁ」

「なにも指摘しないでニコニコしていれば争いは生まれないさ。
 でもそれはほかの人間の気持ちに無関心ってことだ」

「……な、なるほど」

「俺なら指摘しても争いが怒らない方法を知っている」

「なんだって!? そんな魔法みたいなことが!?」

「ああ、どんな指摘に対しても、だ」

俺は気が付けば男の手錠をはずしていた。

「本当にどんな指摘をしても争いにならないんだな」

俺だって今の状況が正しいなんて思っちゃいない。
でも、それはどう変えればいいかわからなかったから。

「教えてくれ! 争いを起こさずに指摘する方法を!」

「その前に、ひとついいか?」

男はそっと指を俺の鼻の前につきつけた。


「鼻毛出てる。
 ……でも服がおしゃれだから、気にならないね」

指摘の直後にフォローが入った。

「これが、どんな指摘でも争いにならない方法……フォローだ!」

「それ誰でも知ってるんじゃ……」

男を逃がした後、先輩警官をはじめ
『指摘しない町』の人たちに話すと反応はみな同じだった。

「「「 フォロー!? そんなの知らなかった!! 」」」

指摘しないことで無関心になっていた人たちは
みな目からウロコが落ちたように驚いた。

のちに、この街は『思いやり指摘の町』に名前を変更した。




「このお話つまらないね。
 でも、すごく風刺的でいいと思うよ」

そういわれるとなんでも許せちゃう。