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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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運命の赤黒い糸

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結婚できずにもう30歳。
親からは圧力をかけられて、やってきたのは占いの館。

「ようこそ、私は占い師のジェーン・Fよ。
 あなたの運命の相手を占ってあげましょう」

「お、お願いします」

「その前に、料金を。1回10万円です」

「高いですね……」

「一生かけても見つからない運命の相手を見つけられるんですよ?
 これほど良心的な値段設定はありませんよ」

「はぁ……」

「あと、ケータイには私のアプリを入れてくださいね」

「占いと関係あるんですか?」

「ありますよ!!」

占い師さんは顔を紅潮させて立ち上がった。

「そのアプリがあなたに幸せを連れてくるんです!!
 信じられないなら結構!! お帰り下さい!!」

「わ、わかりましたぁ!」

慌ててスマホにアプリを入れた。
ここでやっと占いをしてもらえる。

「むむむ……見えます、見えますよ。
 あなた今、結婚で悩んでますね……!」

「は、はい!」

「近々、あなたの前に素敵な男性が現れるでしょう。
 そのチャンス、きっと無駄にしないでくださいね」

「本当ですか! ありがとうございます!」

結婚できるのが40歳とか言われたらどうしよう。
なんて不安でびくびくしていた分、嬉しかった。

どんっ。

「きゃっ!?」

「大丈夫ですか!?」

「す、すみません……私ったら浮かれてよそ見していて……」

顔を上げると、白馬の王子から白馬を取り上げたような
作り物のように完璧なルックスの男性が手を差し伸べていた。

「これは運命かもしれませんね」

「え?」

「実は僕、今朝の占いで
 "見知らぬきれいな女性とぶつかる"と出てまして、驚きました」

すぐに連絡先を聞きたいほどのイケメンだったが、
恥ずかしさもあってその日は別れた。

その夜は布団に入っても心臓のドキドキは止まらない。

「あの人が……運命の人だったりして! きゃー!」


翌日、なんの気なし入ったカフェ。

「あれ? 昨日の……」

「ええ!? また会っちゃいました!?」

「これは運命かもしれませんね」

昨日のイケメンに出会えるなんて。
もしかしたら、男性の言うように運命かもしれない。
信じたくなった。


さらに翌日、急に降り出した雨の日。

「もう、天気予報は晴れると言ってたのに~~!」

これじゃ家に帰るまでにびしょびしょになってしまう。
雨宿りできるお店の前で悩んでいたとき。

「あれ? また会いましたね?
 これは運命かもしれません」

傘を2つ持ったイケメンがやってきた。

「実は雨だと聞いて慌てて家から傘を持ってきたものの
 傘を届ける人が折り畳み傘を持っていましてね、参りましたよ」

イケメンはイケメンらしく傘を差しだした。

「良かったら使ってください」

「はい……///」



……と、ここまでがまだ幸せだったころ。

イケメンとはそれからも何度となく遭遇した。
逆に、会わない日はないくらい何度も何度も。

仕事でも偶然取引先相手として会うし、
偶然タクシーの相乗りになったり、
居酒屋さんでたまたま席が近かったり。

行き過ぎた運命はだんだんと気味悪く感じ始めた。

「これは運命かもしれませんね」

イケメンは会うたびにその言葉を言った。


「それってストーカーなんじゃない?」

女友達はそのものずばり言い切った。

「でも、私の連絡先ひとつも教えてないよ。
 家はおろか、最寄りの駅すらわからないはずよ」

「……それなら、占い師が怪しくない?」

「ジェーン先生?」

「だってタイミングが良すぎるじゃない!
 絶対にどこかであんたの情報を流してるわよ」

言われて気が付いた。
最初によくわからないアプリをインストールしていた。

「どうしてそんなことを……」

「そのストーカーとグルなのよ。
 おおかた結婚させた後で、詐欺をするつもりよ!」

「た、大変! すぐにジェーン先生から逃げなきゃ!」

慌ててアプリを消したとき、ちょうどテレビでニュースがやっていた。


『占いなどと偽って詐欺をしていたジェーン・Fこと
 高道花子氏が逮捕されました。
 高道氏には特別な力もなにもなく鉛筆を転がして
 出た目で運勢を決めていたそうです』

私はテレビにくぎ付けになった。

「……ほらね? やっぱりインチキだったでしょ?」

女友達のドヤ顔に少し安心した。
これでストーカーされることはない。

ピンポーーン。

「あ、荷物届いたみたい。ごめん、出てくれる?」

私が帰りついでに玄関へ出ると荷物を持ったイケメンが立っていた。


「偶然会えるなんて、これは運命かもしれませんね。
 ボク、配達のお仕事をしているんですよ」

あの男だった。
ジェーン先生が逮捕されて、友人の家もわかりっこないのに。

「う、運命なんかじゃありません!!」

イケメンを振り切って逃げた。
けれど、その後も運命は執拗に私を追いつめる。

運命の糸を断ち切ろうと、彼氏を作ってみたがダメ。

「彼の友達だったとは、これは運命かもしれませんね」

誰にも会わないようにと家に引きこもってもダメ。

「電気代の徴収に参りました。
 ここでも会えるなんて、これは運命かもしれませんね」


「ちがうちがうちがう!!
 私の運命は……私で決めるの!!」

もう限界。
まるで誰かにしつこく命令されているみたい。
私自身が人形のような気分。

だったら、せめて最後は自分の意思を見せてやる……。

私はふらふらとした足取りで道路に足を踏み出した。


キキーーッ!!


『こちら、自動車事故があった現場です!
 轢かれた女性は即死。車も急ハンドルで壁に追突しました!
 車もぐしゃぐしゃです。通行止めは6時間後解除されます!』

リポーターが私の死んだ現場を報道していた。
なんだか有名人にでもなった気分。

これでもう、何も恐れることはない。


そのとき、ぽんぽんと肩をたたかれた。



「車に乗っていたの僕なんです。
 こんなところでも会えるなんて、これは運命かもしれませんね」
作品名:運命の赤黒い糸 作家名:かなりえずき